トリコロル・パリの旅日記 ケベック編 その11

写真:ケベック・シティのランドマークとなっているホテル・フロントゥナック

カナダ・ケベックの旅からパリに戻ってきました。モントリオールでは、アメリカ風の都市なのにフランス語が飛び交う、とても不思議な感覚を味わいました。ケベックシティはより歴史を感じさせる街。そして、ケベックの田舎には、緑や湖の多い豊かな自然が広がっていました。



フランスからケベックに行くと、やはりまず言葉に注目してしまいます。カナダの公用語が英語とフランス語なことも、さらにはケベック州の公用語がフランス語だけなことも、情報としては知っていたのですが、カナダでフランス語を母国語としている人がいる、というのがどうもイメージしづらくて…実際に行ってみてわかったこと、面白かったことがこまごまとあったので、ここに書いておきたいと思います。

● とにかくみんな!
ケベック州では、みんながフランス語を話します。モントリオールやケベックシティなどの大都市では、英語もフランス語も両方できる人が多いようで、相手によって言葉を切り替えてくれるのですが、これが案外面倒そうだなと…カフェの店員さんに聞いてみると、お客さんにはまず「Bonjour」と言ってみて、「Bonjour」と返ってきたらそのままフランス語で、でなければ英語に切り替える、とのことでした。
田舎に行けば行くほど、英語を話せない人の割合が増えていくようでした。地元の人と話をする機会がありましたが、ケベックで普通の公立の学校に通うだけでは英語はあまり話せるようにならないのだとか…

● フランスのフランス語とケベックのフランス語
ケベックのフランス語はとても訛りがあると言われ、フランス人がジョークにすることもよくあります。確かにはっきりとした違いがありますが、かなり訛りの強い人でも、言っていることはなんとか理解できるレベルでした。アクセントの強さも人それぞれで、モントリオールなどの都市部ではフランスのフランス語により近い感じでした。

アクセントの違いだけでなく、単語や表現にもケベック独特のものがあるようです。新しい単語が作られているというよりは、フランス語として存在する単語を違う意味で使う、というケースが多いよう。旅行中とくに不便に感じることはなかったのですが、「Merci ありがとう」と言われたときに返す「どういたしまして」が「Bienvenu(ビアンヴニュ)」だったのは面白かったです。フランスのフランス語で「Bienvenu」といえば「ようこそ」と人を歓迎する意味で、「どういたしまして」として使うことはありません。「Bienvenu」は直訳すると英語の「ウェルカム」と同じ意味の単語なので、英語に影響された表現なのでしょうか…

● 標識その他
ケベック州では、道路標識も、バスなど公的なスペースの表示も、すべてフランス語のみでした。フランス語のわからないカナダ人がケベック州内を移動するときは不便だろうな、と想像…。かと思えば、首都オタワやトロントのあるオンタリオ州など、ケベック以外の場所では、すべての表示が必ずフランス語と英語の両方で表記されていました。高速道路脇に立つ指示の看板なども、律儀に英語とフランス語、それぞれ1本ずつ立っています。どちらもカナダの公用語なのだから当然といえば当然なのですが、それにしてはケベック内の英語表記のなさが気になる…(笑)英語圏に囲まれつつフランス語を守ってきたケベック人、そして、そんなマイノリティの存在に気をつかうその他のカナダ人との間で、いまだに溝のようなものがあるのかな…というのは、私の勝手な想像ですが。

「その4」でも書きましたが、できるだけ英語は使わないというのは共通認識のようで、たとえばこの夏公開になったディズニー映画の「プレーンズ 2」のタイトルはもちろん、ケベックでは「Les Avions 2」、ちゃんと「飛行機」をフランス語訳してあります。フランスでは「Planes 2」のままなのにね…かと思えば、テレビCMで商品名などが英語のときの発音の良さはネイティブ並み(笑)。フランスでは、英語の単語もフランス的発音にされてしまうのに…また、レストランで席につくと、店員さんが必ず「Comment ça va ?」とか「Ca va bien ?」、つまり「ご機嫌いかがですか?」と声をかけてきます。これまたとてもアメリカ的ですよね。でも言葉はしっかりフランス語!うーん、なんだか面白い!フランス語という観点からだけでも、今回のケベック旅行、かなり楽しめました。

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