追悼:フランスが愛したジョニー・アリデイ

12月6日、ジョニー・アリデイが長い闘病生活の末、74歳で亡くなりました。ジョニーと共に青春を過ごした世代はもちろん、その子供、孫の世代まで、フランスは悲しみに沈んでいます。
(ちなみにアリディという日本語表記をよく見かけますが、本当の発音に近いのはアリデイです)

12月9日には白いジョニーの棺をのせた車が、この日のために駆けつけたたくさんのファンに見送られつつ凱旋門からシャンゼリゼ通りをパレード。その後ろには、ジョニーが愛したハーレーダビッドソンに乗った革ジャン姿のバイカーたち700人が続きました。その後、マドレーヌ寺院で行われたお葬式には、数多くの仲間たちやファンだけでなく、マクロン大統領夫妻、オランド前大統領とそのパートナー、サルコジ元大統領夫妻も参列し、まさに国葬のようなセレモニーでした。





私生活ではシルヴィ・ヴァルタンやナタリー・バイをはじめ5人の女性と結婚。派手な女性遍歴や酒、ドラッグ、税金がらみのスキャンダルなど波乱万丈な日々を過ごしていたジョニーも、1996年に32歳年下のモデル、レティシア・ブドゥと結婚してからはようやく安定した家庭生活を送るように。お葬式には前妻シルヴィ・ヴァルタン、そして2人の間にできた息子で歌手のダヴィッド・アリデイ、同じく前妻のナタリー・バイ、2人の間にできた娘で女優のローラ・スメット、レティシアとともにベトナムから養子に迎えた2人の娘たちなど、ジョニーのファミリーが勢ぞろいして、悲しみを分かち合っていたのが印象的でした。

海外メディアが「フランスのエルヴィス・プレスリー」と呼んでいるのを見かけましたが、60年代から2017年の今まで、50年以上の間フランスを代表するロックシンガーであり続け、年齢・性別を問わず愛されたという意味で、国内ではエルヴィスをはるかに超える存在とも言えます。豪快さと繊細さの両方を感じさせる独特な風貌や、パワフルな歌声、圧倒的なライブパフォーマンス、それとは対照的に、インタビューで見せるシャイな表情、そのすべてが唯一無二の存在だったのです。





…と、書いている私ですが、フランスに来てすぐのころは、なぜフランス人がそこまでジョニーのことが好きなのか、全然理解できませんでした。私がイメージしていた「フランスっぽいもの」と、ジョニーの存在や音楽はかけ離れているように思ったからです。
でも長くフランスに暮らしていくうちに、なぜフランス人が、ときにはバカにしたり、批判したりしながらも、ジョニーを愛し続けるのかがよくわかってきました。好きでも嫌いでも、とにかく心を揺さぶられるジョニーの歌声、私生活のゴタゴタも隠さず言い訳もせず、自分のイメージをとりつくろわない実直な姿、そして何よりも、最初から最後までロックを愛しロッカーであり続けた芯のある男、それがジョニー・アリデイなのです。

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