〈フランス映画駄話〉パリ愛が詰まった『アメリ』をさらに楽しめる裏話

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世界的に自宅で過ごす時間がぐーーんと増えている今、みなさんいかがお過ごしですか?本を読んだり、音楽を聴いたり、お掃除したり、運動したり、DIYしたり、語学の勉強をしたり、ケーキを焼いたりと、色々工夫をしながらおうち時間を楽しまれている人も多いことと思います。

私は、映画館が閉館になって新作映画を観られない今、もっぱら過去の作品を見直しています。映画に限らず、小説も音楽も絵画も、芸術作品はそれに触れた時の自分の年齢や状況、時代の空気感で、がらりと印象が変わるからこそ面白いものです。今回、フランスの自然派ビスケット「ジェルブレ」の公式サイトで、「ジェルブレと楽しむフランス映画」を紹介するコラムを執筆することになり、10年、いや15年以上ぶりに映画『アメリ』を観る機会に恵まれました。あらすじを含め、映画の見どころはコラム本編をまずはご覧いただくとして(→こちら)、そちらに書ききれなかった『アメリ』にまつわるあれこれを、お久しぶりのフランス映画駄話として、2回にわたって(→パート1→パート2)綴っていきたいと思います。

まずは、予告編をどうぞ。

映画『アメリ』フランス版予告編
引用元:France 3 Paris Ile-de-France

フランス映画史上に残る世界的大ヒットを記録!

『アメリ』公開からまもなく20年ですって。高速でビュンビュン過ぎる時間の風を頬に受けながら、目を閉じて微笑むことしかできないわけですが、あのアメリの一大ブームがふた昔前のことだとはなかなか信じられません。それだけ強く記憶に残った名作でもあり、その後もずっと『アメリ』がパリやフランスを象徴する存在として生き続けてきた証拠かなと思います。

フランスでの封切りが2001年4月。当時まだ私は日本に暮らしていて、偶然にもこの年の7月に夏休みでパリに訪れていました。メトロや街角で『アメリ』のポスターや、映画を特集する雑誌を本当によく目にしたのですが・・・、結局見ないまま帰国。緑色の背景に赤いカットソーを着てぎょろりとこちらを睨むアメリのポスター(トップ画像)に全く惹かれなかったのがその理由です。

その年の11月、『アメリ』はフランス好きの私の心をくすぐるビジュアルに生まれ変わって日本に上陸を果たしました。アメリが寝室のベッドでアルバムを開いているシーンを切り取ったポスターは、赤で揃えたインテリアと小花柄のキャミソール姿のアメリ、彼女のかたわらで眠る猫ちゃんが可愛すぎる〜!タイトル「アメリ」のフォントも可愛いく、中央に「幸せになる」のコピーが浮かんでいたら、そりゃもう前売り券買って張り切って観に行っちゃいますよね。映画のストーリーも登場人物のファッションも、インテリアも全部キュートでパリっぽくて、素敵な世界観にクラクラしながら渋谷のシネマライズを後にしたことを覚えています。ちなみに、壁に飾られた犬と鳥の肖像画と、サイドテーブルにある豚さんのランプを手掛けたドイツの画家ミヒャエル・ゾーヴァは、この映画がきっかけで一躍有名になりましたね。

今となっては、パリの映画館で観ておくべきだったと後悔しきりですが、仕方ありません。つくづく、あのフランス版のポスタービジュアルはどういうつもりか・・・と憎く思いますが、今、改めて考えるとジュネ監督の思いが込められたものだったなと分かります。ポスターについてはまたパート2で。

日本版はこちらの寝室のビジュアルがメインに使われた。

フランスのみならず世界各国でも大ヒットを記録して、「国外で最も観られたフランス映画」となったわけですが(2013年に『最強のふたり』がその記録を更新)、好きなフランス映画は?と聞かれて、今も『アメリ』の名前をあげる日本人はかなり多いのではないかと思います。60年代のヌーヴェルヴァーグやそれ以降のフランス映画は、どうしても一部のマニアックな映画好きにしか受けないという残念な印象が拭えませんが、『アメリ』に関しては、フランス映画に苦手意識を持つ人でも、すんなりと受入れ楽しめたという点で長いフランス映画史に燦然と輝く名作の1本だと言えるでしょう。ちなみに、日本で初公開したのは渋谷のシネマライズでしたが、その後閉館するまで歴代ナンバーワンの観客動員数記録を保持し続けたという伝説の映画でもあります。公開翌年のアカデミー賞で5部門にノミネート、そして本国セザール賞では作品賞や監督賞をはじめ4部門の最優秀賞にも輝きました。

これほどまで多くの人たちに愛された映画なのに、カンヌ国際映画祭には招待されていませんでした。ジュネ監督が語った裏話によると、当時、選考者に見せたものの芳しい反応が得られず、招待はできないけれど出品するならOK。それでもあと数ヶ月待つ必要があるし、その上落選する可能性もあると言われ、「この映画は秋ではなく春に公開すべき」と感じていた監督はカンヌへの出品を諦め(5月開催のカンヌ映画祭を待って、その後一般公開するとなると秋になってしまうため)、希望していた4月に公開を決めました。フタを開けたら、映画は国内外で大ヒット。こんな素晴らしい作品をなぜカンヌに招待しなかったのだ!フランスの恥だ!と、のちに選考委員会がやり玉にあげられたエピソードを語る監督は、心なしかニヤリとしていました。今だから思うことですが、映画祭で一足先に評論家たちに絶賛されるよりも、ひっそりと公開して一般客のクチコミによってじわじわと人気に火が付いていった現象こそアメリに似合っていたし、この作品に魔法をかけてくれたのかなと思います。

アメリにまつわるいくつかの素晴らしき運命

フランス語の原題は『Le Fabuleux Destin d’Amélie Poulain』で直訳すると「アメリ・プーランの素晴らしき運命」。監督曰く、このタイトルに辿り着くまで紆余曲折があり、劇中にも登場する地下鉄のアベス駅にちなんだ『Amélie des Abbesses(アベスのアメリ)』は、語呂も良く、舞台となっているモンマルトルらしさが感じられるからとほぼ決めかけていたところ、ある日、古い映画の名前がずらりと並ぶ冊子を眺めていて、「XXXの素晴らしき運命」という題名を見かけ、これが良い!と直感で変えてしまったとのこと。あれはまさに運命だったと監督はインタビューで語っています。映画のヒット後は、このタイトルをもじった「XXXの素晴らしき運命」というテレビ番組や雑誌の特集など、本当にたくさんの媒体でコピーやパロディが流行しました。

アメリが恋するニノの趣味は、ゴミ箱に捨てられた、いわゆる失敗した証明写真を拾い集めてアルバムにスクラップすること。ちょっと普通では考えられないようなコレクションですが、モデルとなったコレクターが実在したというから驚きです。脚本家が偶然知り合い、そのアイデアを拝借したのだそう。それにしても、世の中色んな人がいるものです。

音楽を担当したヤン・ティルセンも、スタッフが待ち時間に聴いていた曲を監督が偶然耳にして、この人だ!とひらめいたそう。あのアコーディオンの音色あってのアメリですよね。

撮影当時と変わらないカフェ・デ ・ドゥ・ムーラン。
今も世界各地からのアメリ・ファンが訪れる。

アメリが勤める「カフェ・デ ・ドゥ・ムーラン(2つの風車のカフェ)」は元々、近所に住む監督行きつけのカフェで、店主がそろそろ店をたたみたいと話していたものの、撮影場所として採用し、映画のヒットと共にファンや観光客がどっと増え、お店も前以上に活気づき、店主はすっかり元気を取り戻してお店を続けることにした・・・という、映画がカフェの運命を変えたサイドストーリーもありました。ジェルブレ公式インスタグラムにも今のカフェ・デ ・ドゥ・ムーランの写真が紹介されているのでチェックしてみてください。

意地悪なコリニョンが切り盛りする八百屋もモンマルトルに古くからあるお店で、こちらも撮影用の装飾を気に入り、訪れる映画ファンのためにそのまま飾り付けを残しています。この映画がモンマルトルに与えた影響は本当に大きく、かつての下町らしさに加えて、おしゃれなカフェやブティック、おいしいパン屋さんなどがぐんと増え、今ではパリジャンが暮らしたい人気の地区になっています。

個人的に監督に感謝したい運命は、アメリの相手役ニノを演じたマチュー・カソヴィッツの奇跡のキャスティング!1995年に『憎しみ』でカンヌ映画祭監督賞を獲得し、映画監督のイメージが強い彼ですが、俳優としてのカソヴィッツ最高〜、カメラの後ろじゃなくて前に出てきて〜!と常々願っていたので、まさか『アメリ』で彼の演技を堪能できるとは夢のようでした。アメリの策略に無邪気にハマって行く青年を好演していましたよね。もっと俳優カソヴィッツが見たい、という人は、ジャック・オディアール監督の『天使が隣で眠る夜』がおすすめです。ジャン=ルイ・トランティニャンとジャン・ヤンヌ、二人の渋いおじさまの間を揺れ動く、捨てられた子犬みたいなマチュー・カソヴィッツの演技が最高です。

オドレイ・トトゥのオーディション映像
引用元:www.cinematheia.com

この映画にまつわる最も重要な偶然、そして運命は、やはりアメリ役を演じたオドレイ・トトゥの発掘でしょう。監督は最初、イギリス人女優のエミリー・ワトソンをイメージして脚本を当て書きし、実際に彼女とも会い、カメラテストも済ませていました。さらに、フランス語のセリフだと不自然だということで英語に書き直し撮影に備えていたものの、最終的に彼女から個人的な理由により「5ヶ月間もフランスに滞在して撮影することは不可能」と断られ、企画は振り出しに戻ります。その後、あのヴァネッサ・パラディにも声をかけますがアルバム制作中のためNG。エマ・ドゥ・コーヌにも会ってみたけれどピンと来ず。

そんな時、映画『エステサロン ヴィーナス・ビューティー』のポスターに写っていたオドレイ・トトゥを監督が偶然見かけ、この子だ!と思いすぐに連絡を取り、トントン拍子に話が進み、三つ編みにしていた長い髪をカットして、オドレイ演じる「アメリ」が誕生しました。観客の私たちにとっても、当時まだ知名度の低かったオドレイが、瞬く間に人気女優に成長していくリアルな「スタア誕生」を目の当たりにした瞬間でした。彼女のフレッシュさがなければ、アメリはここまで成功していなかったかもしれませんね。のちに、ハリウッド大作の『ダ・ヴィンチ・コード』のヒロイン役にも抜擢されたオドレイ。劇中では他人の人生を変えた彼女ですが、実際には自分自身の人生が大きく変わることになりました。

フランスのおいしいものがいっぱい

映画のシーンのように美しくは割れていませんが・・・
クレームブリュレは間違いないおいしさ。

ジェルブレ公式サイトのコラムでは、ジェルブレのビスケットをもっとおいしく味わえるアメリ式の食べ方を紹介していますが、ほかにも、映画にさりげなく登場するフランスならではのおいしいものたちも印象的です。

『アメリ』が日本にもたらした一大ブームといえば、クレームブリュレ!カリカリに焦げたキャラメルをスプーンで割るのが好き、というシーンとアメリのカメラ目線のあの表情はインパクトがありました。監督曰く、クレームブリュレのシーンは、キャラメルを美しく割ることができるまで、何度もテイクを重ねたとのこと。細部のすみずみまで美しさをとことん追求するジュネ監督の美意識、さすがです。ちなみに、食べ物を粗末にしたくない監督は、その都度クレームブリュレを食べお腹がパンパンだったそうです。

カフェのランチメニュー「アンディーヴ(チコリ)のグラタン」はたっぷりのホワイトソースで。特に、冬場に人気のフランスの家庭料理のひとつです。ブルトドーさんが大好きなチキンの丸焼きとポテトフライ。きれいにカットした後に、一番おいしいとされる希少な部位「ソリレス(これを残すものは愚か者、という意味)」を手で骨から外して食べるシーンは本当においしそう。アメリが偶然見つけた宝箱は、「ベルガモット・ドゥ・ナンシー」という19世紀からある歴史あるキャンディの缶。そして、傷心のアメリが小麦粉まみれになって作っているのは、リュシアンとニノの会話からクイニー・アマンのようだと想像できます。

バターたっぷり、ミニサイズのクイニーアマン。

アメリがショートパスタを皿に盛り、その上にチーズを削ってかけるシーンでは、ふと見た階下のガラス男のおじいさんの食卓にも全く同じパスタとチーズ、バター、サラダが並んでいて、自分も彼のようにたった一人で寂しく食事をして人生を終えて行くんだと悲観するアメリがなんとも切ない・・・。かなり質素にも思えますが、似たようなメニューを平日の夜に食べているフランス人は案外少なくないので、このシーンを見ながら自分の姿を重ねて胸をギュッと締めつけられた人たちが多かったかもしれません。

心に残る名ゼリフ

アメリが暮らしていたモンマルトル地区を代表するモニュメント
サクレ・クール寺院はいつも多くの人でにぎわう。

ジェルブレ公式サイトのコラム本編にも、いくつか印象に残るセリフを紹介していますが、この映画には宝物のようにキラキラした名言がたくさん詰まっています。フランス映画駄話パート1の最後に、お気に入りのセリフを2つ紹介します。

一目惚れのレシピだって知ってる。常連二人にお互い気に入ってるって信じ込ませて、しばらくの間煮込んでおけば間違い無し。
〜カフェの店主、スザンヌ

ことわざを知っている人に悪い人はいない、というのが我が家の言い伝え。
〜アメリの同僚、ジーナ

まだまだ書ききれない『アメリ』にまつわる色々なお話がたくさんあるので、パート2に続きます。ジェルブレのサイトで紹介している『アメリ』のコラムもぜひご覧ください。


→ジェルブレ公式サイト「ジェルブレと楽しむフランス映画・アメリ」

\トリコロルがパリの情報を週2回届けます!/
→ジェルブレ公式インスタグラム @gerble_jp

\トリコロルのお気に入りビスケットをチェック!/
→「フランスで見つけたおいしいもの」ジェルブレの「イチジク&ブランビスケット」


 

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