ピエール・トロワグロが亡くなりました…

リヨンから車で1時間ちょっと北西に行った場所にある小さな町ロアンヌ(Roanne)の名を世界的に知らしめた偉大な料理人、ピエール・トロワグロが9月23日、92歳で亡くなりました。




ピエール・トロワグロは1928年生まれ。ロアンヌ国鉄駅の近くで両親が経営していたホテル兼レストランを1950年代に兄のジャン・トロワグロと共に引き継ぐと、トロワグロ兄弟の料理の評判は瞬く間に高まり、1956年にミシュラン1ツ星、1965年に2ツ星、そして1968年に3ツ星を獲得し現在に至ります。

1970年代、ピエールとジャン兄弟は、ポール・ボキューズらと共に、「ヌーヴェル・キュイジーヌ(新しい料理)」と呼ばれる新風をフランス料理界にもたらしました。昔ながらのこってりして重たい料理から、より軽やかでフレッシュな、まさに現在のフレンチにつながる流れを生み出したのです。その象徴と言われるのが、絶妙な火入れでしっとりしたサーモンを酸味のあるオゼイユのソースでさっぱりといただく「Saumon à l’oseille(オゼイユソースのサーモン)」でした。魚は中までしっかり火を通すものというそれまでの固定概念を覆した革命的な一皿でした。

兄のジャンが56歳の若さで急逝した後、すでに料理人となっていた息子のミッシェルと力を合わせてミシュラン3ツ星を維持し、メゾン・トロワグロはまさにフランス料理界のレジェンドとなりました。

晩年は料理人を引退してレストランを息子ミッシェルに託しました。2017年にはついに歴史的な立地であるロアンヌから、8kmほど西にある小さな村ウーシュに移転。ミッシェル・トロワグロは偉大な父の名を汚すことなく、それどころか、さらに進化を続けています。ミッシェルの息子であるセザールもその厨房に立っているそうで、メゾン・トロワグロの未来は明るいようです。それを見届けたピエールさんも、安らかに旅立てたのではないでしょうか…

なお、Netflixの「シェフのテーブル〜フランス編〜」に、ミッシェル・トロワグロのドキュメンタリーがあります。有名な「サーモンのオゼイユソース」について、そして偉大な父を乗り越えようとする息子ミッシェルの努力、また晩年のピエールさんの姿も見ることができ、とても興味深い番組です。フランス編が日本のNetflixに登場したらぜひ見てみてください。

トロワグロの公式サイト(Troigros)

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