〈フランス映画駄話〉『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』をもっと楽しめる裏話。

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話題のフランス映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋の終わりから』が5月7日(金)に公開されました!心待ちにしていた〜、という映画ファンも多いと思います…が、現在、緊急事態宣言によりやむなく休業している映画館もあり、観に行きたいのに行けないというジレンマを感じている方もいらっしゃるでしょう。いくつか営業中の劇場もありますので、最新の劇場情報をアップデートしている公式サイトをぜひチェックしてみてください。

で、こちらのフランス映画駄話では、まだ観ていない人にも楽しんでいただける、『ラブセカ』にまつわる裏話や俳優陣のお話など、トリコロル・パリ目線でお届けします。ストーリーになるべく触れることなく、ネタバレなしであれこれ書いていこうかな、と思います。

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~ あらすじ ~

高校時代に一目惚れをして結婚したラファエルとオリヴィア。結婚10年目を迎え、ベストセラーSF作家として多忙な日々を送るラファエルと小さなピアノ教室を開くオリヴィアは、すれ違いの生活が続いていた。そんなある日、我慢の限界に達したオリヴィアがラファエルに想いをぶつけると大喧嘩に。翌朝、見覚えのない部屋で目覚めたラファエル。そこは、自分がしがない中学教師で、オリヴィアは人気ピアニストとして活躍する、立場が逆転した<もう一つの世界>だった。そして、その世界のオリヴィアはラファエルを知らなかった…

映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』予告編

目下イチオシ俳優、フランソワ・シヴィル!

恋愛映画はやっぱ自転車二人乗りっしょ!

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フランスでは2019年4月に封切られたこの作品。街角のポスターでフランソワ・シヴィル(François Civil フランソワ・シビルとも書くようです)の横顔が目に入り、謎めいたフランス語のタイトル「Mon inconnue 私の知らない人(女性)」にも興味を引かれて内容を全く知らないまま映画館に飛び込びました。結果、さらにフランソワにシヴィれル(駄ジャレです、すみません)という素晴らしい映画で、その後周りの友人に「この映画は良い!」と激オシしまくっていたのも良い思い出です。

フランス映画通の方々にはすでにお馴染みの顔とは思いますが、フランソワ・シヴィルは今、そしてこれからのフランス映画界を背負って立つ俳優の一人だと思います。1990年生まれの現在31歳ですが、そのキャリアは長く、2005年に映画『Le Cactus』(クロヴィス・コルニアック主演のコメディ)で初デビューを果たしたのが15歳。若い頃から芸能活動をしている人に多い、芸能一家なのかなと思いWikipediaを見たところ、両親とも大学の先生で、演劇を始めたのは好きな女の子の気を引くためだったそう。その子と恋に落ちる代わりに、演技することに熱中してしまったというわけですが、人生何があるか分かりませんね。

2012年にジュリエット・ビノシュの息子役として出演した『ジュリエット・ビノシュ in ラヴァーズ・ダイアリー(原題:Elles)』あたりから日本でも知られる存在になっていたかと思いますが、2019年(日本公開は2020年)の『私の知らないわたしの素顔』ではそのビノシュの危険な恋の相手役をつとめ、同年公開の潜水艦をテーマにした『ウルフズ・コール(原題:Le Chant Du Loup)』ではついに主役を演じ国際的にも知名度が高まりました。そして、この『ラブ・セカンド・サイト』も同じ年の作品で、フランスでは2019年がフランソワ・シヴィル祭り状態となっていたのでした。Netflixの『エージェント物語(原題:Dix pour cent)』を見ていた人は、イポリト君かー!と気づいたかもしれませんね。

彼の1番の魅力はやはり演技力なのだと思いますが、それを上回る人懐っこい笑顔と特徴的な声にも魅かれるんですよね。以前も書きましたが、デビューした頃のロマン・デュリスを思わせる茶目っ気と色気があるなぁ、と個人的には思っています。まだフランソワ・シヴィルを知らないという方は、ぜひぜひ、この映画で彼の沼にハマってください〜。ズブズブズブ。

もう一人の主役も子役出身の実力派

あられちゃんメガネ、しかも赤色!がこんなに似合う人はいません。

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フランソワ・シヴィルの相手役、いや、もう一人の主人公ともいえるオリヴィアを演じたジョセフィーヌ・ジャピ(Joséphine Japy フランス語の発音だとジョゼフィーヌかな?)も素晴らしい〜!彼女もシヴィルと同じく2005年のデビューですが、当時10歳。1994年生まれの現在26歳で、すでに何作かで主演をつとめる実力派です。2014年にメラニー・ロラン(イングロリアス・バスターズなどに出演)が監督した『呼吸 –友情と破壊(原題:Respire)』での演技も注目を集めました。

今回ピアニストを演じるにあたり、4ヶ月間みっちり特訓したとのこと。先生とレッスンを毎日2時間、自主練を2−3時間繰り返し、いくつかの曲は弾けるようになったというから、さすがプロフェッショナルですね!コロコロと変わる表情に、元気いっぱいの明るくポジティブな力強さを感じつつ、時には凛とした近寄りがたいような美しさもある、これからもどんどん活躍の幅を広げていく俳優さんですね。




アメリカやイギリスのラブコメを目指して

ラブコメに欠かせないディナーシーンももちろんアリ!『恋人たちの予感』みたいなことには・・・なりません(笑)

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ユーゴ・ジェラン監督が色んなインタビューで語っていますが、アングロサクソン(イギリス)的なラブコメを作りたい!という願いが『ラブセカ』のスタート地点だったとのこと。監督曰く、そもそもフランスには、笑えて、ドキドキして、少しホロリとするような王道のラブコメ映画が本当に少なく、なんとかフランス版のラブコメを実現できないかとたくさんの名作ラブコメを見直したそうです。主人公のラファエル・ラミス(Raphaël Ramisse)の苗字は、1993年のアメリカ映画『恋はデジャ・ブ(原題:Groundhog Day)』の監督ハロルド・ライミスから拝借したそう。この映画も何度も見返して参考にしたと語っていますが、ビル・マーレイが永遠に同じ日から抜け出せないループものと恋愛を掛け合わせたラブコメで、私は未見なのでぜひ見てみたい!となりました。ちなみに相手役は数多くの名作ラブコメに出演しているアンディ・マクダウェル。

他にも参考にした映画として、『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』や『エターナル・サンシャイン』、『her/世界でひとつの彼女』などを挙げています。ディナーしたり自転車二人乗りしたり、海で泳いだりはもちろん、肩を並べて通りを歩くだけで、あ、『勝手にしやがれ』や『いつも2人で』っぽい!とか、雪の公園で遊ぶシーンは『ある愛の詩』オマージュ?とか、ラブセカの随所にもこれぞラブコメの定番!といったシーンが散りばめられていて、自分なりの発見や推理で見ていくのも楽しいですね。

もうひとつ、「成功するラブコメ」の秘訣として監督が語っていたのが、主人公のバディとなる友人役。確かに名作ラブコメには必ず個性的な友人が主人公を随所でナイスサポートしていますよね(すぐに思いつくのは『ノッティングヒルの恋人』とか)。さすがシネフィルのジェラン監督、分かってらっしゃる〜。特にこの映画はパラレルワールドものでもあり、理解者がいてくれるのは心強い。友人フェリックスを演じたバンジャマン・ラヴェルネは国立劇場「コメディ・フランセーズ」仕込みのしっかりとした演技で、この映画の笑いパートも泣きパートも一手に引き受けていました。ちなみに、フランス語でラブコメは「Comédie romantique」と呼びます。

これぞパリジェンヌな衣装&インテリアにも注目したい

2つのムートンコートでオリヴィアの異なる境遇を見事に表現しています!

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この映画が多くのフランス人の心を掴んだのは、ストーリーの良さや役者陣の素晴らしい演技もありますが、個人的には衣装やインテリアも重要な役割を果たしていたと思います。とってもリアルで細部にまで気が配られているのが良く分かり、そのおかげで、登場人物たちの個性や本当にそこに暮らしているかのような生き生きとした息遣いを感じさせてくれました。特に、私が注目したのは、寝室のシーン。ベッドリネンやベッド周りの小物だけで、主人公が今どの世界にいるのかを言葉なしでパッと分からせる説得力のあるものでした。新婚の二人が過ごすピンクと白のギンガムチェックのベッドカバーは幸せいっぱい、少しずつ生活に余裕が出てきたことを感じさせるリネンは上質だけれど少し冷たい印象、そして、ラファエルが朝目覚めたときのベッドは、一目見て男性の一人暮らしの部屋だと言うことが分かります。友人フェリックスの部屋もごちゃごちゃしているけれど、パリであんなアパルトマンに暮らせるのは憧れますねぇ。

オリヴィアのおばあさまが暮らす介護施設の内装もお見事!!上品な調度品やオブジェが元ピアニストのおばあさまの生き様を投影していたように思います。ちなみに、ガブリエルおばあさまを演じたエディット・スコブは2019年の8月に81歳で亡くなり、この作品が遺作となりました。最後まで現役で、芯の通った眼差しが素晴らしい役者さんでした。

衣装については語りたいことが多すぎるのですが、冒頭、二人が出会って結婚し、新婚生活を送る様子が映像だけで描かれるタイトルバックは、オリヴィアの着こなしがこの上なくリアルなパリジェンヌ。高校時代のデニムのオーバーオール、ラファエルのシャツを借りた着こなし(すぐ後にラファエルが同じシャツをメトロの中で着てる!)も芸が細かいし、ピンクのモヘアセーターに細いチェーンのネックレス、無造作に束ねたヘア、そして基本はスリムなデニムという、真似しやすいキュートなコーデがたくさん。あとは、ミニスカートのウェデイングドレス!!見る限り、レースのトップスとスカートを自分で組み合わせてウェデイングドレス風に仕上げている感じで、それもまたフランスっぽいんですよね。サスペンダーがポイントのラファエルの花婿姿とも相性バッチリでした。

あと、上の写真のムートンのコート。人気ピアニストとなった彼女が着ているものと、最初の世界で若いオリヴィアが着ているもの、同じムートンでも微妙にデザインや質感が違っているので注目です。ボサボサ加減が絶妙だったオリヴィアのヘアスタイルも、もう一つの世界では、髪一本たりとも乱れていない完璧なスタイリングで、この辺の違いにもさりげなくリアリティを感じました。

パリの風景がやっぱり恋しい!

この場所をすぐに言い当てられたあなたはかなりのパリ通!

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なんといっても、この映画のそこかしこで見られるパリの風景は、特にこのご時世グッと来ます。やっぱりパリ最高!!って叫びたくなっちゃいました。特に雪の降るパリやイルミネーションで光輝く夜のパリの美しさが印象的です。『ラブセカ』のロケ地巡りを特集したこちらの記事をぜひチェックして下さい!いつかパリに来た時に、聖地巡礼をしましょう。




何度も見返したくなる魅力がいっぱい

いやぁ、まだまだ語り尽くせないことがたっくさんあります。卓球のユニフォームになぜか日本語が書いてあったり、有名ヘアスタイリストのフランク・プロヴォ(Franck provost)大先生や、俳優のようなカッコよさでも人気を集めるジャーナリスト、ローラン・ドゥラウース(Laurent Delahousse)がカメオ出演していたり。ラファエルの元カノを演じるカミーユ・ルルーシュ(Camille Lellouche)はコメディアンという型にはまらず、歌手や俳優としても大活躍のタレント。こんな人いるいる〜とイラっとさせられるYoutube動画はフランス語の勉強がてらにぜひ覗いてみて下さい。

オリヴィアが好きな曲として劇中で歌われるフランソワーズ・アルディの『Le temps de l’amour(恋の季節)』も要チェックです。改めて聞き返すと本当に良い歌で、歌詞も映画に合っていますね。

最後になりますが、出演者と監督のインタビュー動画をどうぞ。字幕をオンにすると自動のフランス語字幕が出ます。脚本を読んだときの印象や撮影前に監督と主役二人がプラハに週末旅行して、一緒に温泉に入って交流を深めた話!(水着着用ですが)とか、色んな裏話が聞けます。旅行の時に撮った写真は劇中でも使われているそうですよ。

2019年に初めて見て以来、今回2回目の鑑賞となりましたが、『ラブセカ』は何度でも見返したくなる魅力に溢れた映画だと改めて思いました。何度も見返したからこそ気づけるポイントもたくさん詰まってます!劇場に足を運べる方は是非、ご覧ください。

→『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』紹介ページ
→『ラブセカ』でめぐるパリとフランス。ロケ地紹介ページ
→ オフィシャルサイト


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