
植物の薬理作用を利用して、心と体を整える植物療法 「フィトテラピー」は、フランスではおばあちゃんの知恵と同じように古くから受け継がれる自然療法の一つです。ここでは、パリ在住のフィトテラピストmakiさんが、よく使われるハーブや精油を季節に応じた症状別にピックアップ。日本でも取り入れやすいフィトテラピーを通して、毎日がより快適で楽しくなるアイデアをパリからシェアします。
ここでご紹介するフィトテラピーは、病気を治すためのものではありません。自然治癒力を高め、ちょっとした心身の不調を整えたり、予防法の一つとしておすすめするものです。
自分の身体の声を聞いて、皆さんの毎日を快適にするヒントとなれば嬉しいです。
9月のフィトテラピー
Septembre
植物の力で眠れる夜を
9月、暑かった夏の疲れが残り、昼夜の気温差や生活リズムの乱れから、眠りが浅い、寝つきが悪いといった悩みを感じる方も多いのではないでしょうか。そんな時には植物の力を借りて、まずは眠りのリズムを整えましょう。
今回は、睡眠の質を高めるのに役立つハーブティー3種類をご紹介します。
〔 リンデン 〕
(学名 Tilia cordata)
淡い花の香りが心をほぐしてくれるリンデンは、リラックス作用と軽い鎮静作用を持ちます。イライラや不安をやわらげ、緊張でこわばった心身を解きほぐしてくれるため、寝る前のティータイムにぴったりです。フランスでは、大抵のカフェやレストランで飲めるほどポピュラーです。優しい風味で、飲みやすいハーブティーです。
*特別な禁忌は少ないですが、体質によって合わない場合もあるため、初めての方は少量から試してください。

フランスではカフェでも気軽にハーブティーが飲めます。注文すると、ティーパックとお湯で出すところが多いですが、こちらのカフェでは、葉っぱでサーブしてくれて、嬉しい驚きでした。
〔 パッションフラワー 〕
(学名 Passiflora incarnata)
精神を安定させてくれるハーブとして知られるパッションフラワーは、神経の緊張や不安を和らげる作用があります。寝つきをよくし、心地よい眠りに入りやすくしてくれるため、欧米では自然派の睡眠サポートハーブとしても古くから親しまれています。(4月のコラムでも紹介しています)
カモミールやリンデンとのブレンドもおすすめ。就寝1時間から30分前に飲むと効果的です。
*妊娠中・授乳中の使用は避けてください。マテ、ガラナ、コーラノキとの併用は避けてください。鎮静作用のある薬を服用中の方は、まず医師に相談をしてください。

パッションフラワーは、オーガニックショップでも手に入ります。
〔 ヴァレリアン 〕
(学名 Valeriana officinalis)
「眠りのハーブ」と呼ばれるヴァレリアンは、強い鎮静・催眠作用を持ち、睡眠障害の自然療法として古くから使われてきました。神経の高ぶりを鎮め、深い眠りを促します。独特の香りがありますが、ハーブティーとして飲むと次第に心と体が落ち着いていきます。
パッションフラワーとブレンドするとより効果的です。味に独特のクセがあるため、カモミールやレモンバームと合わせると飲みやすくなります。
*妊娠中・授乳中は使用不可。鎮静薬や睡眠薬、入眠剤などを服用中の方は併用を避けてください。マオウ、マテ、ガラナとの併用、またアルコールとの併用は不可です。長期間連用は控え、短期的に利用するのが望ましいとされています。
ハーブティーの淹れ方
ハーブティーを淹れる時には、熱湯250ml程に小さじ1か2が目安。約5〜10分蒸らしましょう。初めて飲む際には、少量からお試しください。

ヴァレリアンとパッションフラワーのカプセル剤。この2つは睡眠のためのハーブとしてポピュラーで、薬局でもよくこのように並べて置いてあります。
⌘ フィトテラピスト(植物療法士) Maki
フランスで植物療法「フィトテラピー」と出会い、日常に取り入れて10数年。学びを深め、AMPP認定フィトテラピストに。東京でファッションPRを経験後に渡仏。フランス企業で10年以上、欧米などの国際プレスを担当。現在はフリーランスにて、フィトテラピー、執筆、PRなど多方面で活動中。
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– Makiさんからのメッセージ –
パリに住み始めた10数年前から興味を持っていた植物療法 「フィトテラピー」は、今では毎日を快適に過ごすために優しく寄り添ってくれるものとなりました。フランスの薬はなんだか強そう、という勝手な先入観から植物由来の優しそうなサプリやハーブティーで自分をケアしたいと思ったのが始まりでした。本格的にスクールで受講したり、15年来のお付き合いになる医師からのアドバイス、エルボリストリ(ハーブ薬局)での処方など、自分でも実践していて、なおかつ効果が広く認められているものを皆さんとシェアできればと思います。