なぜ彼は<特別>だったのか。
“フランス映画史上最も愛された夭折のスター“
フランスのみならず、世界の映画の歴史になを残すスター、ジェラール・フィリップが、スクリーンに蘇ります。生誕100年、没後62年を迎える今年、現代の最新技術によってデジタル・リマスターされた名作を含む全12本が華麗に、優雅に日本の映画館に再臨!第75回カンヌ映画祭で喝采を浴びたドキュメンタリー映画『ジェラール・フィリップ 最後の冬』も日本初公開となります。2022年11月25日(金)から東京での上映を皮切りに全国で順次公開される予定です。→全国の上映劇場一覧はこちら
上映作品12本の紹介はこちらのページをスクロールしてご覧ください。
戦後の暗い時代。大きな銀幕に映し出される物語が、大衆のロマンと夢を一身に受けとめていた映画の黄金時代に、彗星のごとく現れた俳優ジェラール・フィリップ。陽気なプレイボーイから体制に叛逆する青年、貧困にあえぐ芸術家、手段を選ばない野心家、退廃した医師まで、さまざまな役柄を演じ、世代や階級を超えて、あらゆる人々のハートを瞬く間に掴みました。
しかし、キャリア絶頂期に病に倒れ、多くのファンに惜しまれながら1959年に36歳という若さでこの世を去ります。まるで流れ星のような強いきらめきと、一瞬で消えてしまう儚さを思わせる本物のスターだったジェラール・フィリップ。今も多くのファンに愛される名優です。またとないこの貴重な機会にぜひ、彼の輝きを映画館で発見、そして再発見してください。
ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭
期間:2022年11月25日(金)〜
劇場:東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開 →全国の上映劇場一覧はこちら
オフィシャルサイト:http://www.cetera.co.jp/gerardphilipe/
|プロフィール|
ジェラール・フィリップ
Gérard Philipe
1922年12月4日、カンヌの裕福な家庭の次男として誕生。愛称は“ジェジェ”。弁護士を目指してニースの大学の法学部に入学。その後、マルク・アレグレ監督の勧めで俳優を目指し始める。1943年、巡業中にパリの興行主に認められ、舞台「ソドムとゴモラ」で大役に抜擢、脚光を浴びる。1946年には『星のない国』で映画初主演を果たし、舞台カミュ作「カリギュラ」にて主役を得る。舞台が評判を呼び、ジョルジュ・ランパン監督が『白痴』(1946)のムイシュキン公爵役に大抜擢。すでにフランス国立民衆劇場の看板的存在だったが、1946年の『肉体の悪魔』が大ヒット。その後も固定したイメージを払拭するために、『パルムの僧院』などの文学的な作品にも積極的にチャレンジした。1952年に映画『花咲ける騎士道』で世界中にその名を知らしめ、一躍スターダムを駆け上がり、フランス初の国際的スターとなった。1953年にはフランス映画祭のため来日。『赤と黒』(1954)や画家モディリアーニを演じた『モンパルナスの灯』(1958)など数多くの作品に出演。また、1956年には『ティル・オイレンシュピーゲルの冒険』で監督デビューを果たす。円熟期を迎えていた1959年、映画界と演劇界で押しも押されもせぬスターだったジェラール・フィリップは、36歳の若さだったが、惜しまれながら肝臓ガンでこの世を去った。
『肉体の悪魔 HDデジタル・リマスター版』(1947年)
©️Transcontinental Films
|あらすじ|
1918年11月11日、第一次世界大戦の終結を告げる鐘が高らかに鳴り渡る中、ひっそりと小さな葬列を見送る若者がいた。1年前、その若者フランソワは高校に隣接した臨時の陸軍病院にボランティアの看護婦として来ていたマルトと出会う。年上のマルトには出征中の婚約者がおり、はじめは年下のフランソワを相手にしなかった。だが、次第に彼の大人びた言動とその反面無邪気な情熱に惹かれ愛しあうようになる……。
|見どころ|
第一次大戦の最中を舞台に若き人妻と高校生の許されざる恋を描く、戦後フランス映画を代表する傑作。夭逝の作家レーモン・ラディゲの原作を名匠クロード・オータン=ララが叙情味あふれる作品に仕上げた。新進俳優だったジェラールが初の大役を演じ、10代特有の揺れ動く繊細な感情を表現。容姿の美しさだけでなく演技の力量も知らしめた。ジャック・タチも出演している。
出演依頼を受けた時、ジェラールは24歳。主人公のフランソワとは7歳の年齢差があり、最初出演することを躊躇したという。ちょうどその時、友人で脚本家のジャック・ミギュールを介して知り合ったニコル・フルカドのアドバイスを受け、共に原作を読み返すうちに、この17歳の主人公の精神を自らの内に見出したジェラールは遂に出演することを決意。そのよき助言者、ニコル・フルカドとは、のちにジェラール・フィリップの妻となるアンヌ・フィリップである。
原題:Le diable au corps/1947/123分/フランス/モノクロ/スタンダード/モノラル/PG12
監督:クロード・オータン=ララ
出演:ジェラール・フィリップ、ミシュリーヌ・プレール、ジャン・ドビュクール、ドニーズ・グレイ、バロー、ジャック・タチ
原作:レーモン・ラディゲ/脚色・台詞:ジャン・オーランシュ/ピエール・ボスト/撮影:ミシェル・ケルベ
音楽:ルネ・クロエレック/美術:マックス・ドゥイ
日本初公開:1952年 ★リマスター版 日本初公開
『パルムの僧院 2Kデジタル・リマスター版』(1948年)
©️1947 SND (Groupe M6) – DISCINA
|あらすじ|
1815年、ナポリでの勉学を終えて故郷パルムに帰郷したファブリス・デル・ドンゴは、叔母のサンセヴェリナ公爵夫人宅に身を寄せる。若々しく溌剌としたファブリスに、育ての親であるサンセヴェリナ公爵夫人は心奪われてしまう。国王エルネスト4世が催した夜会でファブリスを一目見た典獄の娘クレリアも彼に心惹かれるが、道化役者をあやまって殺してしまったファブリスは城砦に幽閉されてしまう……。
|見どころ|
聖職者になるため、故郷パルムに戻ってきたファブリスの恋と冒険のスペクタクル・ロマン大作。スタンダール原作の映画化作品。初のアクションにも挑み、ジェラールの代表作となった。戦後初めてイタリアでオール・ロケされた作品でもある。
7月の酷暑のローマ、ジェラールは18メートルもある塔からロープで降りる場面ではスタントマンではなく、自分で降りると言い張った。監督によると1回目のシーンを撮り終え、念のため2回目のシーンを撮った後、初めてジェラールの両手がロープとの摩擦により完全に焼け焦げて血だらけになっていることを知ったという。必要なシーンのために、彼は決して不平を言わず不屈の意志と勇気をもって撮影に臨んでいたのだ。共演は、あでやかなサンセヴェリナ公爵夫人にマリア・カザレス、百合の花のようなクレリアにルネ・フォールが対照的な美しさを見せている。特にマリア・カザレスは、ジェラールと舞台「フェデリーゴ」などで共演しており、俳優としてお互いに尊敬しあう仲だった。
原題:La Chartreuse de Parme/1948/174分/フランス/モノクロ/スタンダード/モノラル
監督・脚本:クリスチャン・ジャック
出演:ジェラール・フィリップ、マリア・カザレス、ルイ・サルー、ルネ・フォール
原作:スタンダール/台詞・脚本:ピエール・ヴェリ/撮影:ニコラ・エイエ/音楽:レンツォ・ロッセリーニ/美術:ジャン・ドーボンヌ
日本初公開:1951年(142分バージョン) ★2K 日本初公開
『美しき小さな浜辺 2Kデジタル・リマスター版』(1949年)
©️1949 – PATHE FILMS
|あらすじ|
シーズンオフの海岸のさびれたホテルに、ある夜ひとりの陰のある青年ピエールが宿泊する。ホテルにはわずかな客と孤児院育ちの女中マルトと少年が働いていた。無口なピエールにマルトは興味をもち、次第に心を通わせていく。また、ホテルの女性客と親しくなっていく少年が気掛かりなピエールは、何かと彼に話しかけようとする。ある時、ある女性歌手のレコードをかけたホテルの女主人にピエールは激しい拒絶反応を見せた。その一件からマルトは、ピエールが以前、このホテルで従業員として働いていたことを知る……。
|見どころ|
雨の降り続く海辺の町で、過去を見つめる謎の青年の姿を描くミステリードラマの名作。ジェラールは運命に翻弄され、苦悩する青年を演じた。撮影はウィリアム・ワイラー監督『ローマの休日』(1953)、ヴィム・ヴェンダース『ベルリン・天使の詩』(1987)のアンリ・アルカン。イヴ・アレグレ監督、ジャック・シギュール脚本による本作は、同じコンビの『デデという娼婦』(1947)などの流れを汲み、当時世界的に流行していた“絶望”を描いたペシミスティックな作品に仕上がっている。ジェラールにとっては友人シギュールとの初仕事とあってか、プロデューサーを説得し映画化を承諾させたり、製作資金を自ら集めたりと色々奔走したという。また、雨が始終降っている設定のため、強い風に吹かれて雨でびしょ濡れになりながらも、彼は長いリハーサルを耐え、皆を励まし常に上機嫌な態度で撮影に臨んだという。この撮影2ヶ月後には同じシギュール脚本の、打って変わって明るくスラップスティックな作品『すべての道はローマへ』の撮影に入っていたというから、当時のジェラールがいかに俳優として上り坂で精力的に活躍していたかがわかる。
原題:Une Si Jolie Petite Plage/1949/91分/フランス/モノクロ/スタンダード/モノラル
監督:イヴ・アレグレ
出演:ジェラール・フィリップ、ジャン・セルヴェ、マドレーヌ・ロバンソン、ジャーヌ・マルカン
脚本・台詞:ジャック・シギュール/撮影:アンリ・アルカン/音楽:モーリス・ティリエ/美術:モーリス・コラソン
日本初公開:1999年 ★2K 日本初公開
『ジュリエット あるいは夢の鍵/愛人ジュリエット 4Kデジタル・リマスター版』(1951年)
© 1950 Les Productions Sacha Gordine/2016 Tigon Film Distributors Ltd. All Rights Reserved.
|あらすじ|
恋人ジュリエットのために店の金を盗んだ若者ミシェルは刑務所に入れられてしまう。牢獄の中でジュリエットを想ううちにミシェルはいつの間にか陽光がさんさんと降り注ぐ村へとたどり着く。そこは誰もが思い出を持たない“忘却の村”。村をさまよい歩くうちにミシェルはジュリエットが村の領主“青ひげ”の城に幽閉されていることを知る。
|見どころ|
恋ゆえ罪を犯した青年ミシェル。獄中、夢の中でも恋人を探す彼がたどり着いたのは、誰も記憶を持たない“忘却の国”だった——。『天井桟敷の人々』のマルセル・カルネが、夢と現実の間に彷徨う青年の苦悩を見事に描いたファンタジックな恋物語。『天井桟敷の人々』の名匠マルセル・カルネが1942年より暖めていた企画で、全編夢とも現実ともつかない不思議な雰囲気をたたえている。当初予定されていたのは台詞にジャン・コクトー、主演にジャン・マレーとミシュリーヌ・プレールだった。1950年の製作の時点でマルセル・カルネは主演をジェラールに決めたが、注目していたレスリー・キャロン(『巴里のアメリカ人』)をMGMにとられてしまう。撮影は『美女と野獣』『ローマの休日』など数々の名作を手掛けたアンリ・アルカン。美術は幻想的なブローニュの森をスタジオに完璧に再現したアレクサンドル・トローネル(『天井桟敷の人々』『アパートの鍵貸します』)、そして音楽は「枯葉」などジャンソン、映画音楽を数多く手掛けたジョゼフ・コスマで、テーマ曲「失われた恋」は1951年カンヌ国際映画祭で音楽賞を受賞した。
原題:Juliette ou La clef des songes/1951/106分/93分/フランス/モノクロ/スタンダード/モノラル
監督・脚本:マルセル・カルネ
出演:ジェラール・フィリップ, シュザンヌ・クルーティエ、イヴ・ロベール
脚本:ジャック・ヴィオ/撮影:アンリ・アルカン/音楽:ジョゼフ・コスマ/美術:アレクサンドル・トローネル
日本初公開:1952年 ★4K 日本初公開
『花咲ける騎士道 4Kデジタル・リマスター版』(1952年)
©️1952 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – RIZZOLI
|あらすじ|
18世紀のフランスはアキテーヌ地方。美しいジプシー娘に扮したアドリーヌにのせられ、田舎の野心あふれる若者ファンファンは軍隊に入隊。アドリーヌより告げられた運命の恋と名誉を得ようと俄然はりきる。ある日、襲撃されそうになった王女の危機を救ったファンファンは王女のことが忘れられず、友人の“腕自慢”と共にお城に入り込み、捕らえられてしまう。
|見どころ|
青年ファンファンは「王女と結婚する」という占いを信じ、軍隊に入隊。恋と冒険の日々が始まる。フランスの民謡「ファンファン・ラ・チューリップ」に脚本のルネ・ウェレとルネ・ファレがロマンスやアクションを入れ、ジェラールが大活躍する冒険活劇。1952年第5回カンヌ国際映画祭監督賞受賞作。
ジェラールが “影のある2枚目”から“陽気でやんちゃ”なジェラールの一面を存分に開花させた作品で、“ファンファン”という愛称で世界中から愛されたきっかけとなった。この作品を観たあとで知ると驚きだが、実際のジェラールは乗馬も剣も苦手だったという。またちょうどこの作品の撮影の直前にT.N.Pの「ル・シッド」のリハーサル中に舞台から飛び降り、万全な体調でなかったのも信じられないくらいジェラール扮するファンファンははつらつと演技している。ロケ地のグラース地方は、ジェラールがまさに子供時代を過ごした場所。そのせいか、本作でのジェラールは危険な決闘シーンなどをこなしつつも、スタッフと一緒に悪ふざけに興じるなど、少年時代に戻ったかのような楽しいひとときを過ごした。ヒロインは『夜ごとの美女』でも共演したジーナ・ロロブリジーダ。第75回カンヌ国際映画祭では、ジェラール・フィリップの生誕100年を記念して本作の4K版が、『ジェラール・フィリップ 最後の冬』と合わせて上映された。
Fanfan la Tulipe/1952/100分/フランス/モノクロ/スタンダード/モノラル
監督:クリスチャン・ジャック
出演:ジェラール・フィリップ、ジーナ・ロロブリジーダ、ノエル・ロックウェル、ジュヌヴィエーヴ・パージュ
脚本:ルネ・ウェレ、ルネ・ファレ/撮影:クリスチャン・マトラ/音楽:ジョルジュ・ヴァン・パリス、モーリス・ティリエ/美術:ロベール・ギー
1952年カンヌ国際映画祭監督受賞/日本初公開:1953年 ★4K日本初公開
『狂熱の孤独 2Kデジタル・リマスター版』(1953年)
©️1953 – PATHE FILMS – REFORMA
|あらすじ|
メキシコのひなびた漁村で酒浸りの生活を送る元医師ジョルジュ。フランス人の旅行者ネリーは夫を伝染病で失い、見知らぬ土地で途方に暮れる。同じフランス人のネリーをぶっきらぼうに慰め、何かと世話を焼くジョルジュ。夫の財布が盗まれたためフランスからの送金を待つしかないネリーは、宿屋の主人ロドリーゴに執拗に言い寄られ、住民の好奇の目にさらされながらも、耐えなければならなかった。
|見どころ|
メキシコのある村を舞台に、酒浸りの元医者ジョルジュと未亡人ネリー、それぞれの絶望と孤独、そして再生を描く。ジャン=ポール・サルトル原作「チフス」を元に、ジャン・オーランシュがメキシコを舞台に書き下ろした作品。舞台が仏領インドシナからメキシコへ、病気もチフスから脳脊椎膜炎などへ大幅に変更になった。監督は『夢の箱』『美しき小さな浜辺』『男の世界』でジェラールとはデビュー時から付き合いのあるイヴ・アレグレ。共演は『夜の騎士道』で再び共演することになるミシェル・モルガン。ロケ地メキシコでの撮影は時に75度の熱気の中で続けられた。特にミシェル・モルガンは炎天下の中、熱したジープに乗るシーンなどじっと耐えていたという。ジェラールは撮影のない週末はチャーター機で妻のアンヌとともにメキシコ各地を見て回ったという。
原題:Les Orgueilleux/1953/104分/フランス・メキシコ/モノクロ/スタンダード/モノラル
監督・脚色:イヴ・アレグレ
出演:ジェラール・フィリップ、ミシェル・モルガン、ヴィクトル・マヌエル・メンドーサ、ミシェール・コルドゥー、カルロス・ロペス・モクステマ
脚本:ジャン・オーランシュ/台詞:ジャン・オーランシュ、ジャン・クルーゾー/撮影:アレックス・フィリップス/音楽:ポール・ミスラキ/美術:オーギュスト・カペリエ/ギュンター・ゲルソ
1953年ヴェネツィア国際映画祭優秀作品賞受賞/日本初公開:1954年 ★2K 日本初公開
『しのび逢い ムッシュ・リポアの恋愛修業 HDデジタル・リマスター版』(1954年)
©️Transcontinental Films
|あらすじ|
妻キャサリンの不在にかこつけ、妻の友人パトリシアを自宅に呼び言い寄るリポア氏。頑ななパトリシアの気を引こうと、今までの恋愛遍歴を告白し始める……。職場の上司のアンと暮らし始めるが、家でもこき使われるのに閉口したリポア氏は、次に街で出会った純情なノラとつき合い始める。
|見どころ|
女性とみると口説かずにはいられないジゴロのリポア氏。『禁じられた遊び』や『太陽がいっぱい』の巨匠ルネ・クレマンがロンドンを舞台に撮ったシニカルなラブ・コメディ。1953年カンヌ映画祭審査員特別賞を受賞。共演は『大いなる遺産』『情炎』のヴァレリー・ボブソン、『舞姫夫人』のナターシャ・パリーなどイギリスのスター女優。その他、フランス人のシャンソン歌手、ジェルメーヌ・モンテロが気のいい娼婦マルセル役で出演。
この作品でジェラールは、富と名声を夢見ながらも、現実には次々に女性をたらし込みながら日々を刹那的に生きる現代の“ドン・ファン”の哀しみを絶妙に演じている。『赤い風車』の名カメラマン、オズワルド・モリスによって隠し撮りされた当時のロンドンの雑踏が、異国を一人さまよう主人公リポア氏の孤独感を際立たせて印象的。
原題:Monsieur Ripois/1954/105分/フランス・イギリス/モノクロ/スタンダード/モノラル
監督:ルネ・クレマン
出演:ジェラール・フィリップ、ヴァレリー・ホブスン、ナターシャ・パリー、マーガレット・ジョンストン、ジョーン・グリーンウッド、ジェルメーヌ・モンテロ
原作:ルイ・エモン/脚色:ヒュー・ミルズ、ルネ・クレマン/台詞:レイモン・クノー/ヒュー・ミルズ/撮影:オズワルド・モリス/音楽:ロマン・ヴラッド/美術:ラルフ・ブリントン
1953年カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞/日本公開:1954年 ★リマスター版 日本初公開
『赤と黒 2Kデジタル・リマスター版』(1954年)
©️1954 Gaumont – Documento Films
|あらすじ|
1820年代、ナポレオン失脚後の小都市ヴェリエール。大工の息子ジュリアン・ソレルは仕事よりラテン語を得意とする学問好きな青年であった。彼の才能を認めたシェラン司祭により、町長であるレナル家の家庭教師となる。やがて美しいレナル夫人と愛し合うようになるが、スキャンダルの発覚をおそれて、ジュリアンは神学校に進む。そこでもピラール司教の信頼を得て、ジュリアンはパリのラモール侯爵の秘書となる。
|見どころ|
野心を抱くジュリアン・ソレルは自分の魅力を武器に、愛さえ手段にして貴族階級へ転身を図ろうとするが…。『パルムの僧院』に続く2度目のスタンダール作品の映画化で、ジェラールにとって2本目のカラー作品。3時間超の大作にも関わらず、主人公ジュルアン・ソレルを演じたジェラールは国内外で大絶賛された。監督のオータン=ララはすでに『肉体の悪魔』の後、ジェラールで『赤と黒』を撮ることを夢見ていた。しかしジェラールは「立て続けに2本、スタンダールはやらない!」と心に決めており、オータン=ララは7年の歳月を待つことになる。出演依頼を受けて、ジェラールは『肉体の悪魔』のときと同じくまたもや主人公の年齢の差を懸念する。また、世界の文学史上に燦然と輝く主人公を演じることに対しても重大な責任を感じていたという。
原題:Le Rouge et le Noir/1954/フランス/193分/カラー/スタンダード/モノラル
監督:クロード・オータン=ララ/出演:ジェラール・フィリップ、ダニエル・ダリュー、アントネラ・ルアルディ
原作:スタンダール/脚色・台詞:ジャン・オーランシュ、ピエール・ボスト/撮影:ミシェル・ケルベ/音楽:ルネ・クロエレック/美術:マックス・ドゥイ
日本初公開:1954年 ★2K 日本初公開
『夜の騎士道4Kデジタル・リマスター版』(1954年)
©️1955 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – RIZZOLI
|あらすじ|
ある田舎町に騎兵隊の一行が到着した。隊一番の美男子アルマン中尉は仲間たちを前に、「くじで選んだ女性を駐屯中の1ヶ月の間に恋人にする」と宣言する。いつものごとく、アルマンは美貌のパリジェンヌ、マリー=ルイーズを賭けの対象迫るが、マリー=ルイーズは警戒心から冷たくあしらう。しかし、町の名士ヴィクトルから求婚され迷っていたマリー=ルイーズは、次第にアルマンを愛するようになる。
|見どころ|
野心を抱くジュリアン・ソレルは自分の魅力を武器に、愛さえ手段にして貴族階級へ転身を図ろうとするが…。『パルムの僧院』に続く2度目のスタンダール作品の映画化で、ジェラールにとって2本目のカラー作品。3時間超の大作にも関わらず、主人公ジュルアン・ソレルを演じたジェラールは国内外で大絶賛された。監督のオータン=ララはすでに『肉体の悪魔』の後、ジェラールで『赤と黒』を撮ることを夢見ていた。しかしジェラールは「立て続けに2本、スタンダールはやらない!」と心に決めており、オータン=ララは7年の歳月を待つことになる。出演依頼を受けて、ジェラールは『肉体の悪魔』のときと同じくまたもや主人公の年齢の差を懸念する。また、世界の文学史上に燦然と輝く主人公を演じることに対しても重大な責任を感じていたという。
原題:Le Rouge et le Noir/1954/フランス/193分/カラー/スタンダード/モノラル
監督:クロード・オータン=ララ/出演:ジェラール・フィリップ、ダニエル・ダリュー、アントネラ・ルアルディ
原作:スタンダール/脚色・台詞:ジャン・オーランシュ、ピエール・ボスト/撮影:ミシェル・ケルベ/音楽:ルネ・クロエレック/美術:マックス・ドゥイ
日本初公開:1954年 ★2K 日本初公開
『モンパルナスの灯 HDデジタル・リマスター版』(1958年)
©️1958 Gaumont – Astra Cinematografica – Continental Film GmBh
|あらすじ|
第一次世界大戦後のモンパルナス、そこは芸術家の卵たちが明日を夢見て集う場所。イタリア人のモディリアーニはジャーナリストのベアトリスや友人のズボロスキーに支えられながらも、世間の無理解に自暴自棄となり、貧困とアルコール中毒と結核に苦しんでいた。ある日、美術学校の授業に出席したモディリアーニはジャンヌという美しい画学生と出会う。お互いに惹かれ合う二人。両親の猛反対を押し切りジャンヌは、モディリアーニが結核の療養で来ていたニースへ向かい、二人は一緒に暮らし始めるが……。
|見どころ|
第一次世界大戦後のモンパルナス。天才画家モディリアーニは、芸術家としての高い自負心を持ちながらも、世間の無理解と病魔に苦しんでいた…。実在の画家モディリアーニの生涯を、ジャック・ベッケルが映画化。
もともとはマックス・オフュルスが監督し、イヴ・モンタンが主役のモディリアーニを演じるはずだったこの作品は、1957年にオフュルス監督が亡くなったため、急遽ジャック・ベッケルがメガホンを取ることになった。そしてモンタンの代わりに主役をつとめたジェラールも、モディリアーニと同じ36歳で1年後に世を去ることになったいわくつきの作品である。実在の画家アメディオ・モディリア―ニ(1884-1920)の生涯を演じることになったジェラールは、衣装のジョルジュ・アネンコフにパレットと絵筆を持ってポーズをとらせたり、モディリアーニの周囲にいた画家や彫刻家などについて質問をし、モディリアーニが生きた第一次大戦後のモンパルナスの息吹を画面に吹き込もうとした。共演は優しく献身的な妻ジャンヌに近年でも『男と女 人生最良の日々』(19)に出演し活躍を続けるアヌーク・エーメ、冷徹な画商に個性派のリノ・ヴァンチュラが扮している。
原題:Les amants de Montparnasse (Montparnasse 19)/フランス/1958年/108分/モノクロ/ビスタ/モノラル
監督:ジャック・ベッケル
出演:ジェラール・フィリップ、アヌーク・エーメ、リノ・ヴァンチュラ、リリー・パルマー
原作:ミシェル・ジョルジュ=ミシェル/監督・脚色:ジャック・ベッケル/脚色:アンリ・ジャンソン/マックス・オフュルス/撮影:クリスチャン・マトラ/音楽:ジョルジュ・ヴァン・パリス/美術:ジャン・ドーボンヌ
日本初公開:1958年 ※2016年に上映された素材と同様の素材での上映となります。
『危険な関係 4Kデジタル・リマスター版』(1959年)
©️1960 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS
|あらすじ|
外交官夫妻のヴァルモンとジュリエットはパリの社交界でも目立つ存在だ。しかし、実際の二人はお互いの情事の成果を報告し合う奇妙な夫婦関係を続けていた。ジュリエットは、愛人だったアメリカ人のコートが18歳のセシルと婚約したことを知り、嫉妬心からヴァルモンにセシルを誘惑するよう持ちかける。セシルを追って冬のメジェーヴまで来たヴァルモンは、そこで貞淑な人妻マリアンヌと出会い、本気になってしまう。
|見どころ|
鬼才ロジェ・ヴァディムがコデルロス・ド・ラクロによる1782年の同名原作を基に、舞台を現代のパリに移し、情事の共犯関係にあるヴァルモン子爵とメルトゥイユ侯爵夫人を外交官夫妻に置き換えた野心作。セロニアス・モンク、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズらの奏でるモダン・ジャズナンバーも一層作品を盛り立てている。公開当時、性道徳に反した内容と当時としては過激なベッド・シーンで激しい論争を巻き起こし、 本国フランスでも上映禁止処分を受けたいわくつきの作品で、外国輸出禁止令がしかれていたが、日本が最初の輸出国となった。
よこしまな快楽にひたりながらも瞬間的な真実を求めて生きたヴァルモンという、この複雑な心理を持つ現代の“ドン・ファン”には、ジェラールにまさる適役はいなかった。ジュリエット役にジャンヌ・モロー。リリー・パルマーやミシュリーヌ・プレールの名が挙がる中、ジャンヌ・モローは「ジュリエット役は自分しかいない」と目していたという。貞淑な人妻マリアンヌには、当時ヴァディムの2番目の妻だったアネット・ヴァディム。配役が難航していたときに、その北欧的な美しさから急遽抜擢された。また、奔放な現代っ子セシルに新人のジャンヌ・ヴァレリー。作家・ミュージシャンのボリス・ヴィアンがヴァルモンの友人役として出演している。
原題:Les liaisons dangereuses/1959/105分/モノクロ/ビスタ/5.1ch
監督:ロジェ・ヴァディム
出演:ジャンヌ・モロー、ジェラール・フィリップ、アネット・ヴァディム、ジャンヌ・ヴァレリー、ジャン=ルイ・トランティニャン
原作:コデルロス・ド・ラクロ/脚色:ロジェ・ヴァイアン/ロジェ・ヴァディム/クロード・ブリュレ/台詞:ロジェ・ヴァイアン/撮影:マルセル・グリニョン/美術:ロベール・ギガン/音楽:セロニアス・モンク
日本公開:1961年
『ジェラール・フィリップ 最後の冬』(1959年)
©️Temps noir 2022
ジェラール・フィリップの生い立ちから、その人生の軌跡を描く最新ドキュメンタリー。出演映画のメイキングや貴重な舞台の映像、家族とのプライヴェートフィルムなど未公開の秘蔵映像を最新技術でレストア、ジェラール・フィリップの知られざる真実を描く。
ハリウッドからの高額なオファーを断り、お金に困っていた旧友の演劇に出演していたこと。1944年8月のパリ解放の時にはパリ市庁舎の奪回にも協力するなど、身を投じた対ナチ・レジスタンス運動へ参加していたこと。戦後にはコミュニストとして熱心に活動するなど、妻のアンヌにも背中を押され自分の名声を正義と平和と理想のために捧げたこと。1959年の夏、病に倒れてからも、復帰に向けて野心的に舞台の企画を立てていたこと……。これまであまり明かされることのなかった「人間」ジェラール・フィリップの姿に、誰もがさらに魅了される違いない。
2020年にフランスの文学賞、ドゥ・マゴ賞を受賞したジェローム・ガルサン著「ジェラール・フィリップ 最後の冬」を元に、生誕100周年を記念して製作された。監督は「マリリン・モンロー 最後の告白」(2008)をはじめ、ロミー・シュナイダーやジェーン・マンスフィールド、またロバート・F・ケネディやシャルル・ド・ゴールなど実在の著名人を題材にしたドキュメンタリーを数多く手がけ、その手腕が国際的に評価されているパトリック・ジュディ。第75回カンヌ国際映画祭クラシック部門でプレミア上映された。本編吹替ナレーションは俳優の本木雅弘が担当する。
原題:Gérard Philipe,le dernier hiver du Cid/英題:Gérard Philipe, the last winter/2022/66分/パートカラー/ステレオ/ビスタ/
原作:「ジェラール・フィリップ 最後の冬」(中央公論新社 ジェローム・ガルサン著 深田孝太朗 訳)
監督:パトリック・ジュディ/出演:ジェラール・フィリップ/全編吹替ナレーション:本木雅弘
★日本初公開
ジェラール・フィリップ 生誕100年映画祭
期間:2022年11月25日(金)〜
劇場:東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開 →全国の上映劇場一覧はこちら
オフィシャルサイト:http://www.cetera.co.jp/gerardphilipe/