〈Nu(裸)〉フィリップ・カトリーヌ

週末や好きなときにのんびり聴きたいフレンチ・ミュージックをトリコロル・パリがご案内。

2024年7月26日、金曜日の19時半についにはじまったパリ2024オリンピック・パラリンピックの開会式。慣例となっている競技場での開催ではなく、セーヌ川を中心に、パリの街中でパフォーマンスを行うという史上初の試みで、スタート前から大きな注目を集めていました。(関連記事→2024年パリ・オリンピック開会式は前代未聞の内容に!




フランスが誇る歴史や文化になぞらえた、数々の素晴らしいスペクタクルが繰り広げられましたが、開会式についてはまた別途詳しくお話しするとして、ここでは、LGBTQやファッションショー、ナイトクラブカルチャーをテーマにした後半パートで、青塗り&半裸のディオニュソスに扮したフランス人歌手、フィリップ・カトリーヌが歌った曲「Nu(ニュ 裸)」をご紹介しましょう。(関連記事→フィリップ・カトリーヌ、開会式のパフォーマンスについて語る

このページの最後の方には、フィリップ・カトリーヌのプロフィールや今までの楽曲なども掲載します。90年代に彼を知っている方々は、開催式で、あのカトリーヌ?!?!と衝撃を受けたかもしれませんが、2000年代以降の彼のフランスでの活動も少しお伝えしたいと思います。

さて、開催式を終えた翌日に公開された「Nu(ニュ 裸)」のPVはこちら。動画の下にフランス語の歌詞となるべくフランス語に忠実な日本語訳を入れますので、この曲に彼が込めたメッセージも感じ取っていただけるかと思います。
ちなみに、最初の寸劇は謎のクイズ番組。「正解はBなので、フィリップは今後一切、肩にセーターをかけるのは禁止となりました」という不思議な世界観。


「Nu」Philippe Katerine 2024年


「Nu(裸)」フィリップ・カトリーヌ
フランス語歌詞

Nu
Est-ce qu’il y aurait des guerres si on était resté tout nu ?
Non
Où cacher un revolver quand on est tout nu ?
Où ?
Je sais où vous pensez
Mais
C’est pas une bonne idée
Ouais…

Plus de riches plus de pauvres quand on redevient tout nu
Oui
Qu’on soit slim, qu’on soit gros, on est tout simplement tout nu
Oui ?
Vivons comme on est né

Nu
Vivons comme on est né

Nuuuuuuuu, tout simplement tout nu
Nuuuuuuuu, tout simplement tout nu

Comme le sont les animaux, qui n’en font jamais trop,
ils voient qu’on ressemble trop
à des singes sous des manteaux
des pélicans avec des chapeaux.
Nul !

Tout simplement tout nul.
Restons nus
Tout simplement tout nu.

Il n’y aurait pas eu des guerres si on était resté tout nu
Non
On est tous sœurs et frères quand on est tout nu ?
Mmmmh…

Vivons comme on est né
Nu
Vivons comme on est né

Nuuuuuuuu, tout simplement tout nu
Nuuuuuuuu, tout simplement tout nu
Tout simplement tout nu
Tout simplement tout nu
Tout simplement tout nu
Tout simplement tout nu


「Nu(裸)」フィリップ・カトリーヌ
日本語訳(トリコロル・パリ)


もしみんなが裸で過ごしたら、戦争は起こるかな?
ノン、起こらない。

裸のときはどこにリボルバーを隠す?
どこ?

あなたが考えている隠し場所は分かる
けど
良いアイデアではない
よね…

みんなが裸の姿に戻れば、金持ちも貧乏も、もういない
そう
痩せていようが太っていようが、私たちはみんなただ素っ裸
でしょ?

生まれたときのように
裸で生きよう x 2

はだか〜、ただシンプルに素っ裸 x 2

決してやりすぎることのない動物たちのように

動物たちは分かっている
私たちがコートを着た猿や
帽子をかぶったペリカンに似過ぎていることを
サイテー!

ただただ、シンプルに全然ダメ

裸でいよう
ただシンプルに素っ裸

もしみんなが裸で過ごしていたら、戦争は起こっていなかったかな?
そう、起こっていなかった

裸のときはみんな姉妹、兄弟になるだろうか?
うーん…

生まれたときのように
裸で生きよう

生まれたときのように
裸で生きよう

はだか〜、ただシンプルに素っ裸 x 2
ただシンプルに素っ裸 x 4


Philippe Katerineは本名Philippe Blanchard(フィリップ・ブランシャール)、1968年12月8日生まれの55歳のシンガーソングライターで、現在は俳優や作家としても認知されているマルチな才能の人物。(参照記事→ボンマルシェ百貨店でのイベントをプロデュース

1992年に「Les Mariages chinois」というアルバムでデビューしますが、当時はKaterine(カトリーヌ)というアーティスト名で活動しており、一般的に女性に付けるカトリーヌ(Catherine)という名前を語る謎の男性ミュージシャンというイメージでした。とはいえ、知名度は低く、知る人ぞ知る存在。

続く2枚目のアルバム「L’Éducation anglaise」では、当時のパートナーAnne(アンヌ)と実の妹であるBruno(ブリュノ)と共に制作し、妹が男性名前のブリュノ?とこれまた謎めいた作品でした。この作品は日本の音楽好きやフレンチポップス愛好家、サブカル好きたちの間でスマッシュヒットし、豊富な知識に培われた粋な音楽と、さらには60年代ヌーヴェルヴァーグっぽい風貌も相まって人気を集めました。この頃のカトリーヌの知名度は、確実にフランスよりも日本での方が高かったと思います。カヒミ・カリィへの楽曲提供も話題を集めましたね。

「Education Anglaise」Katerine 1994年


「Dis-moi quelque chose avant de dormir」Kahimi Karie 1995年

2000年には彼が敬愛する女優アンナ・カリーナのアルバム「Une histoire d’amour」をプロデュースし、この頃からフランスでは、元々プロデューサー名として使っていたカトリーヌ・フィリップの名前でアーティスト活動もするようになりました。やはりフランス人にとって、カトリーヌと聞くと女性の姿を想像してしまうので、フィリップ・カトリーヌの方が記憶しやすいという判断だったのかもしれません(あくまでも憶測です)。

これは個人的な感想ですが、彼が長年、カトリーヌという一般的に女性に付けられる名前で活動し続けていることと、LGBTQをテーマにした今回の舞台に起用されたことは、無関係ではないのかなと思いました。

「Une histoire de K」Anna Karina et Katerine 2000年

2000年代に入ってもアルバムはコンスタントに出し続け、2005年に発表した「Luxor, J’adore」という楽曲が、彼の存在をフランス全土に知らしめることになりました。いわゆる可愛くておしゃれなフレンチポップスのカトリーヌ、というイメージを持ち続けていた私は、このMVを見て声が出るぐらい驚きました。が、一般的なフランス人にとってのフィリップ・カトリーヌのイメージは、こちらなんですよね。

「Louxor, J’Adore」Katerine 2005年

この曲はフランスで大大大ヒット。今回のオリンピック開催式でも披露されていましたね。

Je coupe le son, je remets le son(音止めちゃうよ、音またかけちゃうよ)の部分は、みんながオーーーと残念な声を上げるのが定番。カトリーヌ曰く、ナント近くのクリソンという町(ヘビメタの祭典ヘルフェストでも知られる)にあるLe Looksorというディスコによく通っていて、当時、音楽を勝手に止めるDJがいて、それで皆んながイラッとしていた思い出をベースに作ったそう。また、歌詞の内容は音を止めたりかけたり、権力に任せて好き放題する人たちのことも揶揄しているとのこと。

「La Banane」Katerine 2010年

2010年発表の「La Banane(バナナ)」はすでに、ビーチで裸でバナナを食べさせてくれ、と訴えています。どうかしてる。

これを機に、カトリーヌ時代からのフィリップ・カトリーヌの楽曲をMV含め楽しんでみてください!

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