〈フランス映画駄話〉サンタクロースはゲス野郎

『サンタクロースはゲス野郎』
LE PERE NOEL EST UNE ORDURE

1982年 フランス 日本劇場未公開作品
監督:ジャン=マリー・ポワレ
出演:アネモーヌ、ティエリー・レルミット、ジェラール・ジュニョー、マリー=アンヌ・シャゼル、クリスチャン・クラヴィエ他




〈あらすじ〉
誰もが浮かれるクリスマスイブの夜。プレゼントを抱え家路につく人々を横目に、「命の電話相談」の職員、テレーズとピエールは今日も夜通し電話番。多くの人が家族や親しい友人と過ごすクリスマスだからこそ、孤独な人たちは一層一人ぼっちに感じ、電話はいつも以上に鳴りっぱなし。その上「命の電話相談」の職員とはいえ、生身の人間。他人の問題を全部引き受けてはいられない、自分だってイロイロ悩みがある・・・と、誰が悩める人で誰が悩みを聞く人なのか、入り乱れ始めたら最後、彼らの暴走はもう誰にも止められない。

“クリスマス”というキーワードでピンとくるフランス映画といえば?『シェルブールの雨傘』に『ポンヌフの恋人』、ちょっと前では『ヴィーナス・ビューティー』や『ブッシュ・ド・ノエル』、『8人の女たち』もそうですよね。フランスに暮らし始めた頃、この質問をフランス人にしてみると意外な答えが返ってきました。「そりゃぁ、断然『Le Pere Noël est une Ordure』でしょう!」と・・・「ん?」鳩が豆鉄砲を食らったような顔の私に、さらにこう追い討ちをかけます。「え、あんなに面白い映画知らないの?それはもったいない」とか「ゴダールやトリュフォーはよく知ってるのに、フランス喜劇知らないのかなぁ、くぅ」とか。しまいには映画のあらすじを説明しながら、爆笑しすぎて話しつづけられなくなる人たちも。

直訳すると「サンタクロースはゴミ」、邦題は『サンタクロースはゲス野郎』。フランスではクリスマスシーズンに必ずテレビで放映されるクラシック中のクラシック。大抵のフランス人ならみんな知っているこの映画は、コテコテのフランス喜劇。脚本と出演は、特に80年代に絶大な人気を誇った有名な演劇集団「ル・スプランディド」の面々です。「ル・スプランディド」はクリスチャン・クラヴィエ、ミシェル・ブラン、ジェラール・ジュニョー、ティエリー・レルミット、ジョジアーヌ・バラスコなど、今やフランス映画界の大物達が70年代に立ち上げた演劇集団で、結成のきっかけは、全員リセのクラスメイトだったからだそう。

映画の中では、とにかくみんなしゃべくり倒し、5秒に1度の割合でギャグや駄洒落、ブラックなユーモアが飛び交うといっても過言ではない、観客に一切休む時間を与えてくれない濃密なシナリオ。「C’est cela(セ スゥラ)」と「C’est Ca (セ サ)」を気取って言うフレーズをはじめ、この映画から生まれた流行語がいくつもあります。映画に登場する8人の主要人物みんなボケという凄まじい世界で、ハマると色々と語りたくなる魅力に溢れた作品。

こう書いてしまうと、なにやらゴチャゴチャうるさいだけのドタバタ劇のように思われるかもしれませんが、とにかく様々なハプニングや事件が矢つぎばやに起こるにもかかわらず、とにかくすっきりスマートな面白さがあり、野暮くさくない仕上がりになのがこの映画の神がかっているところ。それぞれの個性を殺すこともなく、お互いのボケが相乗効果を生み、さらなるその上、ラストはもう誰もついていけない高みにまで昇華していくおバカな人々・・・




ここまで強烈な個性をもった映画なので、好き嫌いがはっきり分かれるかもしれませんが、37年経った今でもカルト的人気を誇るこのコメディ映画。まだ見たことない人はぜひチェックしてみてください!

〈サンタクロースはゲス野郎のシーン 予告編〉

〈サンタクロースはゲス野郎の名シーンいろいろ〉

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