次のパリ旅行でぜひ訪れるべき新しいモニュメント「Hôtel de la Marine(オテル・ドゥ・ラ・マリーヌ)」が、2021年6月、マクロン大統領臨席のもと開館しました!
直訳すると「海軍の館」というその名のとおり、18世紀末のフランス革命後から2015年までのおよそ200年間、海軍や海洋省が入っていた建物です。2015年に、15区に新しくできた国防省の建物に海軍参謀本部が移転したのち、2017年から2019年にかけて改修工事が行われ、ついに一般公開が始まりました。
1748年、パリ市がルイ15世の栄光を称える彫像の建造を決め、この彫像を設置する場所として、ヴァンドーム広場やヴォージュ広場を参考にして作られたのがルイ15世広場(現在のコンコルド広場)でした。ルイ15世はその場所をチュイルリー公園のすぐ隣の所有地に決め、王室の主席建築家アンジュ=ジャック・ガブリエルの設計により広場が1774年に完成。広場の北側には、ロワイヤル通りを挟んで2つの左右対称の美しい建物が建てられました。その東側の建物が、現在の「オテル・ドゥ・ラ・マリーヌ」です。ちなみに1789年から始まったフランス革命で、この広場の名前は「Place de la révolution(革命広場)」に変更され、1795年に「Place de la Concorde(コンコルド広場)」となって今に至ります。
オテル・ドゥ・ラ・マリーヌの見学は、まずコース選びからスタート。モニュメント全体をおよそ1時間半で見学できる「グランド・ツアー」と、小サロンおよびテラスから美しいコンコルド広場の眺めが楽しめる45分の「サロン&ロッジア」がありますが、時間があればやはり「グランド・ツアー」をおすすめします。
美しいガラス天井のスペースを通って窓口へ。オテル・ドゥ・ラ・マリーヌの見学に必須の「コンフィダン=秘密を打ち明ける相手」と名付けられたヘッドホンをもらったら250年以上にわたる歴史の旅がスタートです。「コンフィダン」はコネクテッド・ヘッドホンで、単なるオーディオガイドではなく、より生き生きと当時の様子、人々の息遣いが感じられる仕組みになっています。「グランド・ツアー」コースなら日本語選択も可能です。
オテル・ドゥ・ラ・マリーヌを含む北側の建物は、完成後、王室調度品保管所として使われることになりました。現在も存在するMobilier National (モビリエ・ナショナル=フランス国有動産管理局)の起源とも言えるこの保管所では、ヴェルサイユやフォンテーヌブロー、コンピエーニュなどに点在していた王室の住居で使われる家具や調度品、生活用品、宝飾品から武器までの選定、購入、保管、メンテナンスまでを引き受けていました。さらに所長だったピエール=エリザベート・ドゥ・フォンテーヌブローおよび、その次に所長となったマルク=アントワーヌ=ティエリー・ド・ヴィル・ダヴレー(名前が長い!)がこの館で生活していたため、18世紀当時のオフィスやアパルトマンの様子が再現されているのも見どころです。
この優雅な王室調度品保管所の運命が激変するのは1789年7月のこと。そう、フランス革命です。7月13日、市民たちは王室調度品保管所で展示されていた王家の武器を強奪し、翌7月14日のバスティーユ牢獄襲撃に使ったと言われています。革命の混乱の中で、1792年には王室の宝飾品コレクションが盗難に遭いました。
フランス革命勃発後、ルイ16世はヴェルサイユからパリに転居を余儀なくされ、それに伴って国家機能のすべてがパリに移ってきました。移転先として海軍省が選んだのが王室調度品保管所で、この建物の名前もオテル・ド・ラ・マリーヌに変更され、その後200年にもわたり、海軍がここを本拠地としたというわけです。1848年にはここで奴隷制廃止の政令に署名が成されるなど、フランスの歴史に深く関わり続けました。
見学の最後は、コンコルド広場に面していて、さまざまなモニュメントが一望できるロッジア(テラス)です。ここで優雅に暮らしていた王室調度品保管所の高級官僚になった気分で、またはここになだれ込んできたフランス革命の民衆の1人になったつもりで、パリの眺めを楽しみましょう。
ヴェルサイユ宮殿とはまた異なる視点で、ルイ15世の時代からフランス革命、そして現代まで、フランスの歴史を肌で感じさせてくれるオテル・ドゥ・ラ・マリーヌ。しかもパリのど真ん中という絶好のロケーション。とにかくおすすめです!
INFORMATION
オテル・ドゥ・ラ・マリーヌ - Hôtel de la Marine
住所 →パリの地区マップ2 place de la Concorde 75008 (地区:オペラ )
TEL
01 87 05 30 30
最寄り駅 →メトロ路線図
Concorde 8、12番線
開館日
月-木、土-日 10:30-19:00、金 10:30-21:30
休館日
1/1、5/1、12/25
料金
サロン&ロッジア(45分)13€、グランドツアー(90分)17€、17歳以下無料 *オンラインでの事前予約推奨
パリ・ミュージアム・パス
不可
→https://www.hotel-de-la-marine.paris/jp