パリの超高級ホテルが続々と閉館する理由。

photo:www.crillon.com

世界一観光客の多いパリには、大小さまざま、レベルもさまざまなホテルがたくさんありますが、「超高級ホテル」と呼べるところは、数えるほどしかありません。そしてこれらのホテルが今、どんどん閉まっていることをご存知でしょうか?ヴァンドーム広場のホテル・リッツ、コンコルド広場のホテル・ドゥ・クリヨンに続き、モンテーニュ通りのプラザ・アテネもついにこの9月末で閉館しました。



…と書くと、「つぶれてしまったの!?」と驚かれてしまうかもしれませんが、実はこれ、改装工事のためなのです。それにしても、ここまでの有名ホテルたちが、営業しながら少しずつ改装するのではなく、完全に閉館しなければならないほどの大規模な工事を行うのはなぜなのでしょうか…

すべては、「パラス」の格付けをめぐる争いが発端です。

フランスのホテルは長い間、4ツ星が最高ランクでした。しかし、アメリカをはじめ、世界の大多数の国の最高ランクは5ツ星。海外からの観光客からもよりわかりやすいよう、2009年から新たに5ツ星のランクが追加されました。さらに、その5ツ星ホテルのなかから、設備、サービスその他において、最高レベルの条件をクリアしたホテルだけに、「パラス palace」の称号が与えられることが2010年決まりました。

「パラス」ホテルは「最高級で完璧で時代を超えた美しさ」を象徴するもの、とされるだけあって、選ばれるための条件は非常に厳しいものです。
● ホテルの歴史的立地、周囲の環境がすばらしい(高速道路や空港近くなどはダメ)
● 美しさ、豪華さ、快適さ、それを提供できる設備
● 少なくともミシュラン1ツ星以上かそれに等しい評判のレストランがある
● 顧客1人あたりに対するスタッフの人数は少なくとも3人
などなど、ここには書ききれないほどたくさんの審査基準があります。

現在、パリのホテルで「パラス」のランクを得ているのは次の6軒のみ。

ムーリス(1835年創業)
プラザ・アテネ(1913年創業)
ブリストル(1925年創業)
ジョルジュ・サンク(1928年創業)
ロワイヤル・モンソー(1928年創業)
パークハイアット・ヴァンドーム(2002年創業)

お気づきでしょうか。パリ、いや、フランスを代表すると言ってもいいホテル、そしてフランス人の誰もが「パラス」だと信じているはずのホテル・リッツとホテル・ドゥ・クリヨンの名前がないのです。まさに、この「パラス」の称号を獲得するために、この2軒のホテルは今、その名誉をかけて、大改装工事中というわけなんですね。例えばホテル・ドゥ・クリヨンは、スパとプールを新たに追加するそうです。

「あれ、プラザ・アテネはすでにパラスなのに、改装工事で閉館しているの?」と疑問に思った方もいるかもしれません。「パラス」の称号は永久ではなく、5年おきの再審査が待っています。次回の審査でも確実に「パラス」を守れるよう、必要なリニューアルを行うことにしたのでしょう。

ホテル・リッツとプラザ・アテネは2014年、ホテル・ドゥ・クリヨンは2015年にリニューアルオープン予定です。私にとって、パリのパラスに宿泊するのは夢のまた夢…ですが、せめてサロン・ド・テでお茶でもしに行きたいなと思います。

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