〈パリところどころ〉12. ポワラーヌ

ときには可愛らしかったり、味があったり、歴史を感じたり…パリを歩いていると出会う、街角のさまざまな風景を、パリに暮らす日本人イラストレーターmarineさんの手描きのイラストとともにお届けします。




12. Poilâne

「パリところどころ」第12回は、古き良きパリの面影を今に残すファサードが素敵な、19区のブランジュリー、ポワラーヌです。

ポワラーヌは、1932年、パリ6区のシェルシュ・ミディ通り8番地に開業した老舗のパン屋さん。それから現在にいたるまで、熟練の職人さんが、選りすぐりの材料を使って、昔ながらの味を守り続けています。天然酵母を使い、木の薪をくべた石窯でじっくり焼き上げられるパンやお菓子は、どれもしみじみした素朴な美味しさです。まさにこのお店の代名詞的な田舎パン「Miche Poilâne(ミッシュ・ポワラーヌ)」のほか、「フランスで見つけたおいしいものとかわいいもの」第5回で紹介したクッキーの「Punitions(ピュニション)」、スプーン型のサブレ「Petites Cuillères(プティット・キュイエール)」は日本へのおみやげにもぴったり。焼き立てをその場でほおばるなら、これまた昔からの定番、タルト・オ・ポムをどうぞ。

パリに5店舗あるポワラーヌのなかから、今回Marineさんが描いてくれたのは、サンジェルマン・デプレにある1号店ではなく、あえてパリ19区のクリメ通り83番地にあるビュット・ショーモン店。その名のとおりビュット・ショーモン公園のすぐそばにあります。岩や崖、小川、滝、洞窟など自然の風景を模していて、さまざまな風景に出会える、緑豊かな大きな公園です。ポワラーヌは昔から有名なこともあり、旅行者がおみやげを買いに行く特別なパン屋さんという印象があるかもしれませんが、旅行者がめったに足を運ばないエリアにもちゃんとあって、地元のパリジャン・パリジェンヌたちに愛されているのです。

このビュット・ショーモン店は、20世紀初頭のブランジュリーの建物を使っていて、当時から残る石窯で今もパンが焼かれています。ファサードには麦畑や農夫、女神のような女性が描かれたパネルや、白いタイル、木のドアや窓が、なんともノスタルジック。店内の装飾のいくつかは歴史的記念物にも指定されているそうです。

Poilâne

住所:83 rue de Crimée 75019

⌘ イラストレーター

下山真鈴  Marine Shimoyama

東京生まれ、パリ在住。アパレルブランドのPRを経て、2006年に渡仏。パリでグラフィックアートを学んだのち、イラストレーターとして活動を開始。フランスと日本で、アパレル・コスメ関連のイラストや、雑誌やウェブサイトの挿絵などを手がける。パリの日常で見かけるおしゃれなパリジェンヌをイラストで紹介するブログ「パリウォッチ」をMadame Figaro Japonのウェブサイトで連載中。

12ヶ月のパリジェンヌ||marine-illustration.com||Instagram
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