夏の暑い日差しから守ってくれる麦わら帽子は、オシャレな小物としても活躍してくれる夏に欠かせないアイテムのひとつ。麦わら帽子の誕生はフランス革命の頃までさかのぼります。南仏のコース地方に暮らしていた羊飼いの女性ペトローニュ・カントゥコーが、周辺の麦畑で見つけたきれいな麦の穂先だけを使って紐を編み、その麦わら紐で作った「Palhola(パローラ)」という名の帽子が、今の麦わら帽子のはじまりだと言われています。
頭頂部の丸いタイプが一般的ですが、フレンチ・スタイルを楽しむならクラウンが平たく、太い黒いリボンをあしらったカンカン帽に挑戦したいところ。今年は、日本のショップでもよく見かけちょっとしたブームが訪れていましたね。フランス語で「Canotier(カノティエ)」と呼ばれるカンカン帽は19世紀に川下りをする船乗り(=Canotier)たちが被る帽子として知られるようになりました。1881年のルノワールの作品「舟遊びをする人たちの昼食(Le Déjeuner des canotiers)」はタイトルにもあるように、カンカン帽を被る人物が描かれています。その後も印象派の画家たちやオシャレなパリジャンたちが好む夏の帽子として定着し、深く被らず頭の上に斜めに載せるようにするのが粋な被り方とされています。
伝統的な帽子のため、パリのお土産やさんでも手に入りますが、ひとつ買うなら1824年創業の老舗メゾン「Willy’s Paris ウィリーズ・パリ」のものがオススメです。初代から現在の6代目まで、レイ家が親子代々受け継いできた技術と伝統を感じられるしっかりとした作りのカンカン帽は、他のブランドと一線を画すクオリティーで、まるで芸術品のよう。かぶり心地も最高です。
フランスに星の数ほどあるおいしいものとかわいいものを、トリコロル・パリの目線でご紹介。パリに暮らす日本人イラストレーターmarineさんの手描きのイラストとともに、歴史のあるもの、職人さんが手作りするもの、フランス人なら誰もが知る庶民的なもの、今流行しているもの・・・など、フランスのあらゆるMerveille(素敵なもの)をお届けします。
下山真鈴 Marine Shimoyama
東京生まれ、パリ在住。アパレルブランドのPRを経て、2006年に渡仏。パリでグラフィックアートを学んだのち、イラストレーターとして活動を開始。フランスと日本で、アパレル・コスメ関連のイラストや、雑誌やウェブサイトの挿絵などを手がける。パリの日常で見かけるおしゃれなパリジェンヌをイラストで紹介するブログ「パリウォッチ」をMadame Figaro Japonのウェブサイトで連載中。