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トリコロル・パリ : パリとフランスの旅行・観光情報 | August 20, 2019

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フランス映画駄話

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〈フランス映画駄話〉タイピスト!part 1

〈フランス映画駄話〉タイピスト!part 1

みなさんボンジュール!これから〈フランス映画駄話〉と題して、現在公開中の映画から懐かしの映画まで、フランス映画にまつわる雑感を、不定期で綴っていこうと思います。トリコロル・パリならでは俳優のゴシップや撮影の裏話などもお楽しみに。



この秋は、いつにも増して見逃せないフランス映画がどんどん日本に上陸していますが、トリコロル・パリ読者のみなさんにぜひおすすめしたいのが、ロマン・デュリスとデボラ・フランソワ主演の『タイピスト!』です。フランスでは「Populaire」というタイトルで昨年の冬に公開され、なかなかのスマッシュヒットを記録したのですが、『アメリ』ほどの旋風は巻き起こせず。かく言う私も、公開時には思いっきり見逃しているという有様です(その理由はのちほど)。最近になってレンタルで観たのですが、これがもうー、素晴らしくって!久しぶりに誰かと語り合いたい、いやひとりでもずっとしゃべっていたい気持ちにさせる、ワクワクする映画でした。世界観もファッションもメイクも音楽も、すべてかわいい。そして映画全体に漂う、そこはかとない「シネフィル感」。「あそこの元ネタは○○だよね」という見どころが満載で、監督さんと友達になれそうな感じ(もしくはお互いこだわりが強すぎて口喧嘩するか・笑)がビシバシ伝わってきました。
出だしから興奮気味ですみません。レビューを始める前にまずはあらすじを紹介しましょう。

● あらすじ ●
舞台は1958年のフランス北部のバス=ノルマンディ。田舎娘のローズ(デボラ・フランソワ)の夢は近くでいちばん大きな街リジューで秘書になること。それが叶わなければ、村で車修理工を営む家の息子と結婚させられてしまうので必死です。彼女の唯一の特技は、タイプライターの早打ち。肝心の秘書の仕事はイマイチだけど、その早打ちの技が認められ、面接に赴いた保険会社の社長ルイ(ロマン・デュリス)からは、「タイプライター早打ち大会」で優勝すれば正式に雇っても良い、という条件を突き付けられます。その日から、ルイとローズ二人三脚で、フランス大会、そして世界大会に向けての厳しいトレーニングが始まったのでした・・・

● 予告編 ●




● レビュー ●
初めて見終えた感想は、とにかく面白い!2時間弱という長さをまったく感じさせないテンポの良さで、最初から最後まで物語にぐいぐい引き込まれていきました。テンポが良いと、とかくストーリを追うことに集中しがちで、キャラクターたちの心情を丁寧に描けていない場合が多々ありますが、この映画は違いました。主人公2人だけでなく、その周りの人物たちも最後まできちんとフォローしていて、見終えた後もすっきり。その上、元気が出て、ハッピーな気分になれる本当に素敵な作品でした。
1958年という時代設定もフランス人に強いノスタルジーを呼び起こすポイント。日本は昭和30年代。私たちが映画『三丁目の夕日』に感じる、「みんなが希望に満ちあふれ元気だった時代」を懐かしむ気持ちとどこか通じるものがあるかもしれません。当時の熱狂が、タイプライター早打ち大会という競技を通じて、画面いっぱいにあふれていました。

ちょっとあか抜けない女の子が大人の男性と出会い、スパルタ教育を受けながら少しずつ洗練された女性に変身していく・・・というストーリは『マイフェア・レディ』や(ちょっと毛色は違いますが)『プリティ・ウーマン』を思い起こさせます。主人公ローズもドジで野暮ったい姿から、ルイの手ほどきを受けて、見る見るうちに自信に満ちあふれた美しい女性へと成長していきます。でも、この映画がひと味違うのは、少女の成長はあくまでもサイドメニューで、軸となるメインテーマが「タイプライター早打ち大会」であるということ。驚くことに、50年代のフランスでは本当にこの早打ちが立派な競技として実在していたのです。レジス・ロワンサル監督が、ふとした時に目にした早打ち大会のドキュメンタリー映像にインスパイアされ、この競技を描く映画をいつか作りたいと思い続けていたとのこと。だから、ルイとローズの関係も「スポ根もの」のコーチと選手という感じ。トレーニングでは、タイプを打つだけでなく走り込み(笑)するシーンも。タイプライターを打つというのは、背筋を伸ばして腕を高く上げながらキーを叩く、実際に体力勝負のスポーツのようなものなんですよね。観ているうちに、あのふたりが『マイフェア・レディ』というよりも、『エースをねらえ!』の宗方コーチとひろみに見えてきたのは私だけでしょうか(笑)

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そしてルイの人物像も、こういった作品にありがちな「お金持ちで権力があり、スタイルも抜群の完璧な大人」という風には描かれません。地方都市の保険会社の社長ではあるけれど、家族からはそれほど評価されず、過去の恋愛をひきずりつつ、「欲しいものはすべて手に入れた」などと淋しげに言う男。田舎娘を洗練した女性に仕立て上げる男も、これまた負け犬・・・というのが、フランス映画らしいところ。ロマン・デュリスをはじめフランス男優って、負け犬を演じさせるとさらに輝く不思議な魅力を持っていますよね。そして、10数年前の過酷な戦争体験が、今も彼に深い傷を残していることが分かります。たとえ何年経っても、戦争の落とす暗い影が、この映画をまた感慨深いものにしていると言えるでしょう。

それにしても、ローズを演じるデボラ・フランソワの肌の美しさには、ファーストシーンからノックダウン。ワンピースからのぞく背中を見て、ルイが採用を決めたんじゃないかと思うぐらい、彼女の肌はとても印象的でした。約150人もの女優をオーディションした監督が彼女を選んだ決め手が「赤面したから」というのだから、陶器のような真っ白な肌は大切なポイントだったはず。ベルギー出身のデボラ・フランソワは、少し野暮ったく、でも清楚で屈託のないローズにぴったりでしたね。カンヌ映画祭でパルムドールに輝いたダルデンヌ兄弟監督の『ある子供』で主演デビューを飾った彼女ですが(ちなみにブリュノ役は『最後のマイ・ウェイ』で激似のクロード・フランソワを演じたジェレミー・レニエね)、実力は認められつつも、フランスでの活動は今ひとつぱっとしない印象でした・・・が、このローズというはまり役を得て、これからさらに飛躍する女優さんになること間違いなし!

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ロマン・デュリスはパリの街角でスカウトされて主演した1994年のセドリック・クラピッシュ作品『青春シンドローム』から、長年にわたり話題作に出演している人気俳優。シュッとしたかっこよさがあるわけではないけれど、なんだか憎めないキャラクターでいかにもフランス男優という雰囲気が良いんですよねぇ。フランスではデボラ・フランソワよりもデュリスの方が断然知名度が高いので、公開時のポスター(写真上)はデュリス押し!彼女のかわいらしい洋服もほとんど見えず、まさかこんなに乙女心をくすぐる映画だとは想像できませんでした。みなさん、同意してくれますよね?これが前出した公開時に観そびれた理由です。日本版ポスターのおかげで「絶対に観よう!」と心に決めたわけです。

☆以下、ネタバレを含むこの映画にまつわる駄話になりますので、未見の方はご注意ください。




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● 完璧なまでの衣装とセット ● 
デボラ・フランソワが身につける50’sファッションは、この作品の大きな見どころのひとつ。田舎から出てきたばかりの頃の花柄や少し子供っぽい襟付きのワンピースは、とろけるほどかわいいし、そのシルエットの美しいこと。パリ、そしてニューヨークでの決戦大会に向けて、どんどん華やかに洗練されたドレスを身に着けていくさまも、とても自然に描かれていました。衣装を担当としたシャルロット・ダヴィッドに拍手!彼女はこの映画でセザールの最優秀コスチューム賞にノミネート。ちなみにジャン・デュジャルダン主演の『OSS117』シリーズでも彼女が手がけた見事な50’sファッションが映画を彩っていました。個人的には、初挑戦の大会で着た白とグレーのスタンドカラーのワンピース(写真上)がお気に入り。オフの日の何気ないボートネックのカットソーとボリュームのあるスカートも素敵でしたね。全体を通して『ロシュフォールの恋人たち』にも通じるカラフルで軽やかな素晴らしい衣装でしたね。

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ぼんやりしたまゆげのアイメイクや素朴なポニーテイルも、大会を勝ち進むにつれて、アイラインくっきり、マリリン・モンロー風ウェーヴのかかった大人の女性らしいものに変化。ローズの心の成長とともに、洋服とメイク、そしてヘアスタイルがきちんと使い分けられているのには感服しました。ヘアとメイクを担当したジャン・ミロンとチ・タン・チュ・ヌグエンのチームはオドレイ・トトゥ主演の『ココ・アヴァン・シャネル』でセザール賞にノミネートされているので、そちらもチェックを。

セットも完全に50年代を再現。ローズの父が営む日用品店に置かれた商品はひとつひとつじっくりと眺めたい衝動に駆られました。特に大変だったのは撮影に使うタイプライター。当時のマシンを持っている人を探して譲り受け、あたかもピカピカの新品に見えるように、すべてのパーツを修理したり、ボディの色を塗り直したり、本当に苦労したようです。フランスの公式サイトにあるメイキング動画でいろんな裏話が聴けます。
エッフェル塔をバックに車で駆け抜けるシーンの撮影現場のビデオを発見しました。この車を調達するのもきっと大変だったでしょうね。フランスの良いところは、街並みが昔とまったく変わっていないところ。外でのロケでも、CGを使っていろんなものを消したりする必要が少なそうですよね。

次回のレビューpart2では、この映画にちりばめられたオマージュ作品の数々や、サウンドトラック、共演者たちのお話などをいたします。

『タイピスト!』オフィシャルサイト
Photo : © Mars Distribution

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